梵鐘単体の評価
奈良・朝護孫子寺:聖徳太子が開いた阪神タイガースの聖地!?
昨シーズンは日本シリーズを制し38年ぶりのAREを成し遂げた阪神タイガース。ペナントレース佳境に入りアレンパが見えてきた9月、信貴山の朝護孫子寺を訪れました。聖徳太子が物部氏と争いを繰り広げていた8歳の頃、寅年・寅日・寅刻にこの山で毘沙門天王を感じとり、その加護で勝利したと伝えられています。それ以来、「信ずべき、貴ぶべき山」ということで聖徳太子はこの場所を信貴山(しぎさん)と名付けられました。トラに縁があって、勝運のご利益があるお寺ということで阪神タイガースの関係者やファンの聖地としても人気が高いパワースポットです。
紅葉で彩られた境内(朝護孫子寺 プレス用画像集から)
寅年、寅の日、寅の刻はいつ?
海外の方にも人気のご来光
聖徳太子は574年2月7日に現在の奈良県明日香村に生まれ、622年2月22日に亡くなったとされています。この聖徳太子が生きた49年間で寅年、寅日、寅刻を探してみましょう。まず寅年ですが、582年(8歳)、594年(20歳)、606年(32歳)、618年(44歳)があります。蘇我氏と物部氏の争いは587年のできごとなので、それより前の582年(壬寅、みずのえとら)に絞られます。当時は聖徳太子が8歳だったという歴史の言い伝えとも一致します。この年には年干支と同じ壬寅の日が2月5日、4月6日、6月5日、8月4日、10月3日、12月2日と6回登場します。これはあくまでも新暦における私の計算です。旧暦に置き換えるとおそらく28日ほど後ろにずれるので新暦6月5日はだいたい旧暦7月3日あたりの寅刻(午前3時~5時ごろ)になると思われます。ちなみに朝護孫子寺では毘沙門天王御出現大祭を7月3日午前3時と定めておられます。
朝5時ごろの参道
この出来事が深夜から明け方だったこともあり、夜間にお参りされる方も多いお寺です。お堂に入れるのは日中のみですが境内は24時間入ることができて灯篭に明かりがついています。私が到着したのはまだ暗い朝4時30分でしたが参拝の方がチラホラおられました。幻想的な夜の信貴山はスピリチュアルな雰囲気です。
梵鐘しらべ
鐘楼堂(朝護孫子寺 プレス用画像集から)
時間 | 5時30分(冬期は6時) |
打数 | 7打 |
前捨て鐘 | ー |
実質 | 6打 |
後捨て鐘 | 1打 |
もはや主力メンバー、今年もベンチ入りした守護神!
阪神タイガースが甲子園球場で試合をする際、朝護孫子寺の縁起もの「張り子の寅」がタイガースのベンチに置かれています。昨年の寅はおなかの白い部分に「A.R.E. 日本一」と書かれ、タイガースは日本シリーズの激闘を制して日本一に輝きました。
今シーズンを迎えるにあたり、同寺では球団史上初のリーグ連覇を祈願し、おなかの部分に大きく「勝氣(かつき)」、右の踏ん張る後ろ脚には「アレンパ」と揮毫した寅を球団に寄贈しました。これで今シーズンは万全の態勢で寅が力を発揮し、勝利に貢献してくれるはずでした。
ところが、ここでアクシデントが発生します。4月10日の甲子園球場での広島戦、ファウルボールがタイガースベンチに飛び込み、アレンパ祈願の寅を直撃してしまいました。寅は破壊されてしまいましたが、奇跡的に「アレンパ」と書かれた足の部分だけは無事でした。プロ野球のシーズンは長期戦です。良い時もあれば悪い時もあるものです。破壊された寅は、悪いことの身代わりとなったと考えることもできるでしょう。
朝護孫子寺ではすぐに新しい寅をタイガースに送り、その寅が今シーズンの戦いを見守っています。
梵鐘ものがたり
推定350年前に作られた江戸初期の梵鐘が活躍中
今回は特別に、朝護孫子寺の僧侶様のご案内で、貴重なお話を伺うことができました。本堂から奥の院に向かう参道の途中、斜面に建つ多宝塔と向かい合うように、鐘楼堂が佇んでいます。この鐘楼堂は1687年に再建されたもので、内部の階段を登ると二階部分に梵鐘があります。二階からは境内が一望でき、聖徳太子の頃から変わらない朝日が昇る時間の眺望は素晴らしいものです。
この梵鐘が打鐘されるのは毎朝、基本的に5時30分で冬期には6時に変更されます。また、毎月1日、3日、寅の日、3月11日、8月6日、8月9日には特別な法要が行われるため、打鐘の時間が30分早まります。7月3日の毘沙門天王御出現大祭では、なんと早朝3時から法要が始まり、それに合わせて打鐘されるそうです。
聖徳太子御像(朝護孫子寺 プレス用画像集から)
梵鐘には銘が確認できなかったものの、江戸初期の鐘楼建立と同時に作られたと思われます。およそ350年前に鋳造された貴重な鐘は、今もなお現役で使用され続けています。戦時中、金属供出が多くの寺院で行われた際、朝護孫子寺も多くの金属を供出しましたが、この梵鐘は山の斜面にあるため運び出すのが困難だったと考えられています。
梵鐘の下側には寅の文様がしっかりデザインされていました。
アクセス
住所
〒636-0923 奈良県生駒郡平群町信貴山2280−1
お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
- 梵鐘の愛好家
- 出張先や夜時間に梵活中
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
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