日本一早い『ゆく年くる年(2024-2025)』大予想

円覚寺除夜の鐘1957年(鎌倉市図書館近代史資料室1200120309)

今年も残すところあと2か月となり、梵鐘界のビッグイベント「大晦日の除夜の鐘」が近づいてきました。そして、この時期に欠かせないのが、NHKで毎年放送される「ゆく年くる年」ですね。梵鐘が一年で最も注目される瞬間が、もうすぐやってきます。

『ゆく年くる年』の基本情報

「ゆく年くる年」は、梵鐘ファンにとっても待ち遠しい番組です。毎年この放送を心待ちにしている方も多いことでしょう。私自身もその一人で、2024年から2025年の放送内容が気になって仕方ありません。というわけで、今回は私と、スタンドエフエムでコラボ配信をしているガウディジョーンズ博士と一緒に、今年の「ゆく年くる年」を予想してみたいと思います。楽しいラジオ配信もしているので、ぜひそちらもチェックしてくださいね。

今年もあと2カ月チョイ。ゆく年の振り返りと来る年を展望しながら、どこよりも早くNHKの年末年始を予想してみます。今回はルール説明の回の前半です。 ちなみに2023-…

さて、まずは「ゆく年くる年」の基本情報をおさらいしておきましょう。この番組は毎年、大晦日から新年にかけて生放送されていて、紅白歌合戦が終わった後の23時45分から0時15分までの30分間放送されます。

昨年(2023年~2024年)の放送内容を振り返ってみましょう。オープニングは、例年通り紅白歌合戦の華やかなエンディングから一転、静寂に包まれたお寺や雪景色が映し出されるのが定番です。昨年のオープニングは京都・知恩院から始まりました。この70トンもの大梵鐘を17人のお坊さんが撞くシーンは、「ゆく年くる年」を象徴する光景のひとつで、数年毎に登場する定番スポットです。

大梵鐘は大晦日と御忌の時にだけ使います

次に、進行役を務めるアナウンサーと、放送の拠点となるキーステーションが設けられます。例年、このステーションは首都圏の宗教施設が選ばれることが多く、昨年は東京の神田明神がその舞台となりました。

歌川広重 江戸名所神田明神(東京都立中央図書館332-C017)

くる年の大河ドラマに関連した場所も要注意です。今年(2024年)は吉高由里子さんが紫式部を演じる『光る君へ』が放送されています。紫式部が源氏物語の構想を練ったとされる滋賀県の石山寺が、昨年のエンディングで登場しました。

鳥居清長筆 紫式部(東京国立博物館A-10569-778)

また、お寺の除夜の鐘や初詣で賑わう神社に加え、年が明けた街のにぎわいも必須の中継ポイントです。昨年は、2024年3月に北陸新幹線が開業予定だった福井駅が中継地のひとつとなりました。さらに、京浜トラックターミナルのように、年末年始返上で働く人々の姿もひとつの側面として紹介されました。

さて、いよいよ今年(2024年~2025年)の「ゆく年くる年」の放送内容を予想してみましょう。毎年変化する中継地やテーマに期待が高まりますね。今年はどんな寺院や神社が登場するのでしょうか。

オープニングを飾る定番のお寺はどこか?

オープニングを飾るお寺はどこでしょうか?やはり定番は知名度が全国区のお寺や神社です。特に、お寺の場合は梵鐘そのものが有名で、国宝や重要文化財に指定されているものが多いです。

過去10年のオープニングを新しい順に振り返ると、知恩院、唐招提寺、清水寺、比叡山、薬師寺、興福寺、八坂神社、平等院、永平寺、高野山といった具合です。これらの寺社は、数年おきに登場するレギュラー的存在ですので、今年も再び登場する可能性は十分に考えられます。

それ以外にも、国宝や重要文化財に指定され、有名な梵鐘を持つお寺で、しばらく登場していないところもあります。例えば、東大寺(国宝)、円覚寺(国宝)、建長寺(国宝)、円城寺(重文)、萬福寺(重文)などが候補に挙げられます。

東大寺の国宝梵鐘

中でも、私は晩鐘のイメージが強い東大寺を推したいと思います。国宝の大梵鐘が鳴り響く姿は、年の終わりを象徴するにふさわしい光景ではないでしょうか。

首都圏が強いキーステーション

次にキーステーションを予想してみましょう。過去10年のキーステーションを見ると、神田明神、鶴岡八幡宮、浅草寺、深大寺、成田山、スカイツリー、川崎大師、春日大社、伊勢神宮、再び浅草寺と、首都圏が圧倒的に強いことがわかります。今年もその傾向を踏まえて予想してみます。

これまで登場していない首都圏のお寺としては、増上寺、築地本願寺、池上本門寺、總持寺が挙げられます。ただし、築地本願寺は梵鐘が塔の中にあるため、撮影が難しそうです。過去に「ゆく年くる年」で取り上げられたこともなさそうです。また、總持寺も大梵鐘が魅力的ですが、今年は北陸の總持寺祖院が確実な状況のため候補から外れます。

2023年大晦日の増上寺

そうなると、残るは増上寺と池上本門寺ですが、東京タワーとのコラボレーションが期待できる増上寺が有利と予想します。大晦日の東京の夜景とともに映し出される増上寺の光景は、何度見ても非常に絵になります。

来年の大河ドラマ べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~

2025年の大河ドラマは、横浜流星さんが演じる蔦屋重三郎の出世物語が放送されます。蔦屋重三郎は、喜多川歌麿や葛飾北斎、滝沢馬琴といった名だたる芸術家を見いだした、江戸時代の「メディア王」とも言える人物です。特に、正体不明の浮世絵師・東洲斎写楽がどのように描かれるかにも注目が集まっています。

市川鰕蔵の竹村定之進 東洲斎写楽(三田メディアセンター(慶應義塾図書館))

ドラマの舞台となるのは、蔦屋が活動していた江戸浅草や日本橋界隈かと思われます。となると、浅草寺が選ばれそうな予感もしますが、すでに東大寺や増上寺が登場するとなると、警備や予算的に厳しいかもしれません。そこで、今回はあえて小さなお寺に焦点を当てて予想してみたいと思います。

喜多川歌麿のお墓

そこで注目したいのは、世田谷区にある烏山寺町です。このエリアは500mほどの通りに26もの寺院が密集しており、「東京の小京都」とも呼ばれています。その中でも、専光寺は喜多川歌麿ゆかりのお寺として知られています。ご住職に伺った話によれば、戦争で資料は消失してしまったものの、言い伝えとして、専光寺がかつて浅草にあった頃、歌麿が暮らしていた長屋の大家さんがお寺の檀家だったそうです。歌麿は娘の供養のためにお墓を建て、自身もそこに埋葬されたと伝えられています。

こうした由緒ある烏山寺町からの中継に、知る人ぞ知るスポットとして大いに期待したいところです。

新年を迎えた各地の模様

新年を迎えた街角の様子がどこから中継されるのかも、毎年注目のポイントです。特に「くる年」に大きなイベントが控えている場所が多く選ばれます。たとえば、福井駅や新函館北斗駅(新幹線開通)、エスコンフィールド(プロ野球の新球場)、そしてオリンピック関連ではリオデジャネイロや韓国平昌、常呂カーリング場などが記憶に新しいですね。

では、2025年に控える大きなイベントは何でしょうか?そう、大阪・関西万博です。このため、道頓堀のグリコサインや通天閣といった大阪の象徴的なスポットが大本命となります。また、阪神淡路大震災から30年という節目でもあり、万博と合わせて大阪が中継先として選ばれる可能性は非常に高いでしょう。

大階段が映える駒沢オリンピック公園

しかし、あえて大阪を外すとすれば、東京の駒沢オリンピック公園を推したいです。2025年11月には、耳が聞こえない人たちのためのオリンピック「デフリンピック」が日本で初めて開催されます。陸上競技は駒沢競技場で行われる予定で、注目される場所のひとつです。デフリンピックの紹介を通じて、多様性やインクルージョンを象徴する中継が行われることも考えられるでしょう。

そのほか、可能性が高い中継ポイント

總持寺祖院 石川県輪島市 2024年11月重要文化財に指定

大浦天主堂 長崎県長崎市 2024年10月ノーベル平和賞の関連施設

大御神社登り龍 宮崎県日向市 2024年8月日向灘地震

新薬師寺 奈良県奈良市 奈良・新薬師寺:鬼の爪痕が残るミステリースポット(重文)

笠置寺 京都府相楽郡 京都・笠置寺:スピリチュアルな聖域に伝わる解脱鐘(重要文化財)

しょさんべつ天文台 北海道苫前郡 最北端の天文台

お寺や教会、そして中継先の予想をしてきましたが、いずれも日本の伝統や文化を感じられる場所ばかりですね。どのお寺の鐘が新年の幕開けを告げるのか、どの街角から中継されるのか、今から楽しみでなりません。ガウディジョーンズ博士の予想は11月末を予定しています。来年も皆さまにとって素晴らしい一年となりますよう、心から願っています。

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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