京都・鞍馬寺:牛若丸が歩いた山道に響く、寛文の梵鐘

京都市内から叡山電鉄に乗って北へ。終点の鞍馬駅で降りると、そこはもう鞍馬山の麓です。お隣の貴船神社と並んで、京都でも有数の観光スポットとして知られる鞍馬寺。源義経が牛若丸と呼ばれた少年時代に、ここで修行を積んだという伝説が残る場所でもあります。

清少納言が「近うて遠きもの」と詠んだ参道

仁王門をくぐり、朱色の灯籠が両脇に並ぶ石段を登っていくと、いよいよ参道が始まります。山門から本堂までは、徒歩で約30分の登り道。清少納言は『枕草子』のなかで「近うて遠きもの」として「鞍馬のつづらをりといふ道」を挙げています。平安時代の昔から、この長い参道が知られていたことを示す一節です。実際に歩いてみると、千年前の人々が同じ道に息を切らしていた光景が、ふと重なって見えてきます。

今回はその「つづら折り」を、ケーブルカーでショートカットさせてもらいました。「牛若号Ⅳ」と名付けられた鮮やかな黄緑色の車両に乗り込み、山門駅から多宝塔駅まで、わずか2分の空中散歩。それでも本堂までは、そこからもうひと登りあります。

たどり着いた本堂前は、宇宙の中心を表すという六芒星の石畳が広がる、独特の空間。振り返れば、向かいに比叡山の稜線がくっきりと浮かんで見えます。楽をして登ってきた自分が申し訳なくなるほど、見事な眺めでした。

梵鐘しらべ

時間いつでも撞ける
打数
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

日本でただひとつ、お寺が運営する鉄道

鞍馬寺の山門駅から多宝塔駅までを結ぶ「鞍馬山鋼索鉄道」、通称ケーブルカー。実はこれ、日本で唯一、宗教法人が鉄道事業者として運営している鉄道なのです。
しかも路線の長さはわずか207メートル。これは鉄道事業法に基づく鉄道としては日本一短い距離です。所要時間はおよそ2分。乗ったと思ったらもう着いている、という感覚です。
さらにユニークなのが運賃の仕組み。実はこのケーブルカー、運賃は無料ということになっています。代わりに乗車前、鞍馬寺の諸堂維持のための寄付金として1口200円(小学生は100円)を納めると、そのお礼として乗車できる、という形をとっているのです。
なぜこんな複雑な仕組みなのか。鉄道の「運賃」として徴収すると営利事業と見なされ、宗教法人であっても課税対象になります。一方、お寺への「寄付金」であれば宗教活動の一環として非課税。事実上の運賃でありながら、形式は寄付。この絶妙なバランスが、お寺と鉄道という異色の組み合わせを成り立たせているのです。

梵鐘ものがたり

源義経の足跡──奥の院へ続く道に立つ鐘楼

本堂の裏手から、奥の院・義経堂へと向かう山道があります。ここからが鞍馬寺のもうひとつの顔、深い山の参道です。訪れたのは年の瀬。京都市街には雪の気配もありませんでしたが、本堂を離れて山道に入ると、日陰の岩肌や義経堂の屋根に、わずかに白いものが残っていました。鞍馬山の標高と、奥に進むほど深くなる森の気配を、雪が静かに教えてくれます。少し登ると、木立の合間に、朱色の屋根が美しい鐘楼が見えてきます。

吊られているのは、寛文十年(1670)の銘を持つ梵鐘。およそ350年前、四代将軍・徳川家綱の時代に鋳造された鐘です。胴には縦横の帯による区画がくっきりと刻まれ、下部には唐草文様の優美な帯。和鐘の様式をよく伝える堂々たる姿です。本堂周辺の華やかさとは対照的に、奥の院に向かう山道の途中というロケーションが、この鐘の佇まいをいっそう静かに、深いものにしています。


鞍馬山は自然の宝庫としても知られ、クラマゴケやクラマトガリガなど、この山で発見された動植物に名を残すものも少なくありません。牛若丸が天狗と剣の修行をしたという伝説も、この豊かな山の気配のなかでなら、なるほどと頷けるものがあります。
参道をさらに進めば、義経堂を経て、貴船神社へと抜ける山越えのルートが続いています。清少納言が詠み、牛若丸が駆け、寛文の鐘が響いた道。歴史が幾重にも積み重なった山を、今日も多くの参拝者が登っていきます。

アクセス

住所

京都府京都市左京区鞍馬本町1074

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お寺の鐘しらべ管理人

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  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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