京都・和束町:茶畑の里に響く廃寺の鐘

京都府南部、和束町(わづかちょう)は京都最大の茶の産地です。一帯に広がる茶畑は美しい山里の風景をつくり出し、その中でも石寺(いしでら)地区は茶畑と山並みが織りなす風景が評価され、京都府景観資産の第1号に指定されています。

今回は宇治茶の歴史とともに育まれてきた石寺集落に伝わる600年前の梵鐘を紹介します。

聖武天皇が建てた石原宮ゆかりの石寺

奈良時代、聖武天皇が恭仁京と紫香楽京を行き来するために設けた街道の途中、この地に「石原宮(いしはらのみや)」という離宮が築かれました。現在も、その石原宮跡は和束町石寺の一角に残されています。

この場所には、かつて「石原寺(いしはらじ)」と呼ばれる寺院が存在していたと伝えられています。寺はすでに廃絶しましたが、その名が地名として残り、現在では「石寺(いしでら)」と呼ばれています。

梵鐘は、かつての石原寺に関連すると考えられるもので、石原宮跡近くの小高い丘の上に、鐘楼とともに今も静かに佇んでいます。

梵鐘しらべ

梵鐘ものがたり

集落で守られた室町時代の文化財

この廃寺跡に伝わる梵鐘は、銘文により永享十年(1438年)に鋳造されたことが確認できます。もともと、奈良県磯城郡田原本町にある常福寺(現在の浄福寺)のために作られたものでしたが、何らかの理由で約30km離れたこの石寺に移されたようです。現在は石寺集落の人々が大切に保管し、盆踊りなどの行事や大晦日の除夜の鐘に用いられています。

梵鐘と茶畑へのショートトリップ

この鐘を訪ねるには、JR加茂駅から和束町方面行きのバスに乗り、「和束高橋」バス停で下車します。一日に10本前後の運行ですので、事前に時刻を確認するのがおすすめです。バス停からは坂道を15分ほど登ると、茶畑を一望する丘の上に鐘楼跡が現れます。静かな里山の風景のなかで、過去と今をつなぐ鐘の音に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

アクセス

住所

京都府相楽郡和束町石寺丸塚82

ホームページ

和束町ホームページ

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

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