奈良・東大寺:古都の夜を彩る巨大梵鐘(国宝)

東大寺の大仏殿が閉じられる17時。昼間は賑やかだったお寺に静寂が訪れます。東大寺には夜ならではの見どころがたくさんあります。その中の一つが、奈良時代から伝わる巨大な国宝梵鐘(ぼんしょう)です。毎晩20時、奈良の街は古代の響きに包まれます。

奈良時代から1300年間使われている国宝梵鐘

大仏殿から二月堂につづく坂道を登ると、鐘楼ヶ丘と呼ばれるエリアに現役最古の鐘があります。この鐘は毎晩20時に鳴り響きます。お堂守さんにお断りすれば、鐘の真下で音を身体全体で感じることもできます。ただし打鍾の邪魔にならないように、フラッシュやライトは禁止されているので気を付けましょう。

鐘しらべ

時間毎晩20時
打数18 打
前捨て鐘2 打
実質14 打
後捨て鐘2 打

現役の国宝梵鐘は残りわずか

国宝梵鐘は全国に14件あります。その多くは博物館や収蔵庫で保管されていて、現役のお寺の鐘として使われているものは少なくなりました。日本全国で3か所のみ、西日本ではここ東大寺でしか見ることができません。

東大寺の鐘は毎晩20時に18回鳴り響きます。そのうち前後2回は連続して打鐘される『捨て鐘』とされ、実質的な打数は14回です。この14回の明確な由来は伝わっていないそうなのですがコラムで考察しているので良かったら読んでみてください。

1300年に作られた奈良時代の梵鐘は、古都奈良を彩る貴重な存在です。

鐘ものがたり

国宝の鐘楼は鎌倉時代に再建されたもの

伝統を受け継ぐお堂守さん

毎晩20時の打鐘を担当するのは、お堂を管理するスタッフの方で一般にお堂守さんと呼ばれます。東大寺では、お堂守さんの中でも特別に『大鐘家(おおがねや)』と呼ばれます。現在の大鐘家は明治初期から6世代にわたりご家族が代々伝統を受け継いでいます。大鐘家さんは毎晩決まった時間に、撞き紐を肩に担いで二月堂の方から颯爽と現れます。

鐘楼から二月堂に向かう上り坂

900年間日本一を守り続けた巨大梵鐘

大鐘を支える建屋の鐘楼は国宝に指定されています。現在の鐘楼は鎌倉時代から伝わる建物です。鐘楼と梵鐘が両方とも国宝指定されているのは全国でここだけです。

日本で梵鐘作りが始まった奈良時代の古代鍾としては規格外のサイズで重量26トンを誇ります。梵鐘を打つ材木(撞木と呼ばれる道具)だけで重量200キロと言われています。あの豊臣家滅亡のきっかけとなった方広寺の鐘が登場するまで、およそ900年間日本一の座を守り続けました。

毎晩20時に18回打鐘される

地元で親しまれる二月堂からの夜景

古都の夜景を楽しむことも東大寺の魅力のひとつです。鐘楼ヶ丘からさらに登ったところにある二月堂は夜通し明るく、警察官が常駐してるので安心です。奈良中心地や生駒山を一望できる二月堂のテラスは、地元の人達に愛される夜景スポットです。夜の鐘を聞いた後は少し坂を登って二月堂からの夜景を堪能しましょう。

二月堂のテラスは一晩中明かりが灯される

二月堂のルーツ、一月堂(正月堂)は?

東大寺には二月堂のほか、三月堂、四月堂、五月堂があります。では一月(正月)はどこにあるのでしょう。実は、ここから20キロほど離れた京都の笠置寺にあります。お水取り儀式も笠置寺の正月堂から伝えられました。スピリチュアルな聖域、南山城の笠置寺には日本に二つしかない六葉弁連と呼ばれる貴重な梵鐘があることでも知られています。笠置寺:南山城に伝わる文化財、六葉蓮弁の解脱鐘

アクセス

東大寺の敷地はとても広大です。入り口から鐘楼ヶ丘へたどり着くだけでも15分くらいかかります。最寄り駅の近鉄奈良駅から徒歩で行くとトータル30分くらい必要です。興福寺、国立博物館を横に見ながら鹿がくつろぐ奈良公園を散歩するのはとてもいいものです。

鹿がくつろぐ奈良公園

簡単に行くならJR奈良駅、近鉄奈良駅からバスで10分ほど。東大寺に行くバスは頻繁に運行されていて、日中なら5分くらい待てば乗ることができます。どちらの駅もバス停の案内所があるので聞いてみましょう。

住所

奈良県奈良市雑司町406-1

ホームページ

https://www.todaiji.or.jp/


お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!