正式名称は鹿苑寺だけど金閣寺として有名
京都・金閣寺:徒然草に登場した旧西園寺の梵鐘
金閣寺は1994年(平成6年)にユネスコ世界遺産(文化遺産)「古都京都の文化財」に登録されました。特に金箔で飾られた金色のお堂は有名で、毎日たくさんの観光客が世界中から訪れます。とても有名な観光地ですが、お寺としての印象が薄いためか梵鐘の存在はあまり知られていません。見落とされがちな存在ではありますが、実は金閣寺の中で最も古い歴史を持つ貴重な文化財です。
お寺を入るとすぐ鐘楼が見える
朝9時の開門に合わせて大行列
この梵鐘は、毎日朝6時、9時、17時に鳴らされます。6時と17時は開門時間外なのでお寺の中で直接見ることができません。打鐘を見るのであれば、9時に狙いを絞って一番前に並んで、開門と同時に急いで鐘楼へ向かう作戦しかありません。9時すこし前に到着してみると既に行列ができていて100人以上が並んでいました。さすが世界遺産・金閣寺。その時間から最後列に並んでも打鐘の時間には全く門の内側に入ることはおろか、近づくことすらできませんでした。お寺の門からだいぶ離れた場所で、行列の中でかすかに鐘の音が聞こえた状況でした。しかし、土曜日と日曜日ならばまだチャンスは残されています。
開門前の様子。9時にはこの後ろにも長い行列。
梵鐘しらべ
時間 | 6時 9時 17時 |
打数 | 10打 1打 10打 |
前捨て鐘 | ー |
実質 | 10打 1打 10打 |
後捨て鐘 | 土日は200円で撞くことができる |
徒然草で登場する西園寺の鐘
西園寺は京都市上京区に移転して現存しています。
総理大臣を務めた西園寺公望はこのお寺の一族出身で、写真の看板は西園寺公望が書いたものだそうです。
公望は幕末の戊辰戦争で官軍側の司令官として活躍し、フランス留学後には伊藤博文内閣では大臣を歴任し、そののち内閣総理大臣を三期つとめました。また、教育にも尽力し、自らが創設した私塾立命館は現在の立命館大学の礎となりました。
梵鐘ものがたり
奈良時代の特徴がみられる金閣寺の梵鐘
徒然草に登場した旧西園寺の梵鐘
金閣寺は室町時代1337年に建てられました。それまでこの場所には藤原家が建立した「西園寺」というお寺がありました。吉田兼好(1283-1350)が鎌倉時代末期に書いた随筆集「徒然草」に西園寺の梵鐘が登場します。
凡そ、鐘の声は黄鐘調なるべし。これ、無常の調子、祇園精舎の無常院の声なり。西園寺の鐘、黄鐘調に鋳いらるべしとて、数多度鋳かへられけれども、叶はざりけるを、遠国より尋ね出いだされけり。浄金剛院の鐘の声、また黄鐘調なり。
徒然草画帖 第1段(東京国立博物館 画像番号C0034636)
現代語に解釈すると「お寺の鐘の音は黄鐘調がいい。これぞ無常、祇園精舎の無常院の音といえる。西園寺の鐘は黄鐘調にしようとして何度かトライしてみたけど失敗し、遠い国からアドバイスをうけた。浄金剛院の鐘の音も黄鐘調だ。」という感じです。
徒然草では西園寺の鐘があんまり良くない感じですね。この西園寺の鐘というのは、金閣寺に受け継がれて入り口の所で毎日撞かれている鐘だと考えられています。
参拝者でも鐘が撞けるチャンス
土日はひとつき200円
金閣寺は週末の土日限定ですが200円支払うと自分で鐘を撞けるシステムになっています。私が訪れた時はそのお金が能登半島地震の義援金として寄付されるということでした。鐘の横にお賽銭箱が用意されているスタイルは今は珍しくなってしまいました。音がうるさいとか、あぶないとか、いろいろあるんでしょうね。自分の好きな時間に鐘を撞くことができて、しかも寄付ができるなんてとてもいいお話だと思います。
金閣寺の創建前からある古代鍾
梵鐘の前に掲げらえている説明看板
看板によると、梵鐘は鎌倉時代前期に作られたとされています。金閣寺に遺されている梵鐘の外観は、奈良時代頃の古代鍾の特徴が伺えます。西園寺家は藤原家の一門で先祖は藤原道長、藤原鎌足まで遡ることができる家柄です。そんな藤原一族のお寺ですから、奈良時代から伝わる古い鐘を持っていて金閣寺に伝わった可能性もあると思います。
アクセス
住所
京都府京都市北区金閣寺町1
お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
- 梵鐘の愛好家
- 出張先や夜時間に梵活中
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!