梵鐘単体の評価
奈良・榮山寺:藤原南家に伝わる菅原道真ゆかりの梵鐘(国宝)
奈良県五條市の榮山寺は、藤原南家の武智麻呂によって創建された歴史あるお寺です。武智麻呂の子である藤原仲麻呂が建立したと伝えられる八角堂は奈良時代初期の状態をそのまま今に伝えています。1300年前の建築物でありながら、建てられた時期が特定できている点でも貴重な文化財で国宝に指定されています。
八角堂は天平宝字4年~8年(760年-764年)の建立
空海伝説が残る音無川を歩く
流れが穏やかな音無川と榮山寺橋
JR和歌山線の五条駅から榮山寺には徒歩で25分くらいかかります。吉野川沿いの道を歩き、お寺が近づいてくると「音無川」と呼ばれる穏やかな川の景色が広がります。かつてこの川は激流で、弘法大師空海が榮山寺で修行をしていた頃、川の轟音が僧侶たちの修行の妨げとなっていました。空海は川に岩を投げ込み、さらにお経を唱えてその流れを鎮めたと伝えられています。
梵鐘しらべ
時間 | 全く撞いていない |
打数 | ー |
前捨て鐘 | ー |
実質 | ー |
後捨て鐘 | ー |
日本一の長距離路線バスで行く榮山寺
タイミングが良ければ最寄りのバス停『栄山寺口』を利用してみましょう。このバス停は一日3便なので計算して行動する必要がありますが、五条駅から歩くよりかなり近いです。八木新宮特急バスは日本一の走行距離を誇る路線バスで、近鉄の大和八木駅から五條バスセンター、十津川温泉、熊野大社を経て新宮駅へと向かいます。その全長は約170km、停留所の数は168、所要時間は約6時間半というおそるべきバス路線です。
東京からですと新横浜の新幹線始発に乗って、京都駅から近鉄特急に乗り継げば9時15分大和八木駅発に間に合います。始発の大和八木ではバス出発前に終点まで利用する乗客をチェックしていました。理由をお尋ねすると、同一便で始発から終点まで完全乗車したら『乗車記念証』というのが頂けるそうです。
私が利用した時は大和八木からの乗車が10名、そのうち3名が終点まで行かれるとのことでした。
梵鐘ものがたり
銘文には藤原、橘の文字がはっきり確認できる
京都から伝わった国宝梵鐘
榮山寺には平安時代に作られた梵鐘が伝わっています。延喜十七年(917年)に作られたこの梵鐘は、格調高い文章と字体の美しさから工芸品としての価値が極めて高く国宝に指定されています。銘文には「藤原道明」と「橘澄清」が道澄寺のためにこの鐘を作ったと記されています。京都市伏見区に存在した道澄寺は応仁の乱で廃寺となりました。残された梵鐘は、藤原南家の縁で榮山寺に伝わりました。
榮山寺近くの宇智川には経文と仏像が彫られた跡が残る
菅原道真のウワサが絶えない名鐘
古くから伝わる伝説として、この梵鐘の銘文は菅原道真の遺文ではないかというウワサがあります。鍾銘にはしっかり延喜17年(917年)と明記されています。これは菅原道真が大宰府で亡くなってから14年後にあたるので、歴史研究者の基本的な見解としては都市伝説的な扱いのようです。しかしこれが菅原道真と全く関係が無いかというとそうではなく、実はこの鐘には道真に関係するもっと重大な秘密が隠されています。お寺から頂いた『栄山寺梵鐘銘文』と『栄山寺鐘銘詳解』を読んでそのことに気づくことができました。
詳しくはコチラ→榮山寺の梵鐘と菅原道真の秘密に迫る
アクセス
住所
奈良県五條市小島町503
ホームページ
お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
- 梵鐘の愛好家
- 出張先や夜時間に梵活中
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!
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