東京・泉龍寺:伝説の僧侶・良弁ミステリーと大型鐘楼

今回紹介するのは泉龍寺。小田急線狛江駅の目の前に位置しています。東京以外ではあまり知られていないお寺ですが、珍しい型の大きな鐘楼は必見です。お寺には奈良時代の僧侶・良弁(ろうべん)にまつわる伝説と品物が伝えられています。良弁はお寺の弁財天池で雨乞いの儀式を行ったとされています。この一帯の地名である和泉(いずみ)は弁財天池の湧水が由来とされています。お寺の裏手には、良弁のお墓とされる古墳が残されていてます。これが本当に良弁のお墓であれば、世紀の大発見と言えるでしょう。

湧水で周辺一帯を潤した弁財天池

駅前はすでに泉龍寺・弁財天池のエリア

周辺はとくに目立った大きな施設や観光地は無く、狛江駅の利用客は基本的にそのエリアの住人です。北口を出ると目の前に緑地が広がり、そこはすでに弁財天池特別緑地保全区として指定されています。その先には泉龍寺があり、徒歩1分くらいで到着します。

狛江駅前にはお寺の雑木林

梵鐘しらべ

時間1月1日、8月7日 9:00~15:00
打数時間内なら自由に撞ける
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

江戸時代の一両っていくら?

江戸時代のお金一両が現代の価値としてどのくらいなのかを考えてみましょう。一両はお米が一石買えるお金だそうです。一石とはお米2.5俵に相当しますが、これは一人が一年間に消費するお米の量とされています。

一石とはひとり分の食料ということなので、加賀百万石というのは百万人都市という意味になります。今も昔も百万人が大都市の目安であったことがわかります。現代の日本だと、東京、横浜、大阪、名古屋、札幌、神戸、川崎、広島、仙台が百万人を超えています。

一人あたりの一年間の食費はどのくらいかというと、大雑把に一食1000円として、一日三食、365日でおよそ100万円になります。

千両役者とか千両箱なんて言葉がありますが、千両はこの計算だと10億円。ロト7の大当たりと同じくらいだから感覚的には大体そんなもんかもしれません。

梵鐘ものがたり

初代梵鐘は江戸初期の1648年に作られた

とても珍しい二階建の大鐘楼

境内のほぼ中央に大きな二階建ての鐘楼が見えてきます。とても珍しい形の鐘楼ですが、山門を兼ねた様式として作られたため、この形になったと言われています。泉龍寺に最初の梵鐘ができたのは1648年、江戸時代の初めでした。当時の鐘楼はごく普通の形で、サイズも小さかったそうです。

江戸末期1844年に今の大鐘楼が完成しました。この時の住職が青梅・宗泉寺の鐘楼を参考にしたと言われています。梵鐘もこの時もっと大きく鋳造し直され、合わせて190両という大金が投じられました。仮に、1両を今のお金で100万円とすると約2億円の大事業だったことになります。

泉龍寺仏教文庫・館長の菅原さんにたくさんお話を伺いました。貴重なお話しを教えて頂きまして、どうもありがとうございました。

泉龍寺仏教文庫の館長 菅原照英さま

伝説の僧侶、良弁とはどんな人?

泉龍寺の弁財天池で雨乞いの儀式を行ったと言われる良弁(ろうべん)はどんなお坊さんでしょうか。一般にはあまりなじみが少ない人物ですが仏教の歴史ではかなりの大物です。お寺を建てることを開山と言います。東大寺の開山堂には良弁がおまつりされていて、初代別当と言われているお坊さんです。お水取りで有名な東大寺二月堂には良弁杉と呼ばれる大きな杉の木があります。

四代目の良弁杉。先代は60年前の台風で倒壊した。

泉龍寺に伝わる良弁のミステリー

石板には文字がかすかに確認できる

首都・奈良でトップの地位に君臨した良弁ですが、本当に東京にやってきたのでしょうか?

お寺の裏手には経塚古墳と呼ばれる5世紀ごろの円墳が残されています。この小高い丘はその後もお墓地として再利用され続けたようで、墓石のような石碑(正式には板碑と言うそうです。)が見つかっています。そのうちの1枚が泉龍寺仏教文庫の展示コーナーで見ることができます。この石碑には「〇弁」という文字が刻まれています。もしかして良弁のお墓?と思いたいところですが、この石碑は室町時代に作られたものと考えられています。おそらく良弁がこのあたりに来たという話は昔から伝わっていて、誰かがそれっぽい感じで石碑をこしらえた可能性も考えられます。良弁僧正のお墓がもしもここにあるとすれば、それは日本の歴史を塗り替える大発見と言えるでしょう。

アクセス

住所

東京都狛江市元和泉1丁目6−1

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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