北鎌倉・円覚寺:年に2日だけ響き渡る弁財天堂の『洪鍾』(国宝)
円覚寺はJR横須賀線・北鎌倉駅の目の前。鎌倉幕府の執権、北条時宗が800年前に建立しました。週末に開催される座禅会は人気で、たくさんの参加者で賑わいます。広大な境内には多くの歴史的な建築物や寺宝があり、その中でも国宝の梵鐘は特別な存在です。
この梵鐘は「洪鍾(こうしょう)」と書かれ、「おおがね」とも呼ばれます。洪鍾に至る険しい石段を登ると、壮大な富士山のパノラマが広がります。鎌倉時代に作られた洪鍾は国宝に指定されていて、1年の中でわずか2日間だけ響き渡ります。
鎌倉幕府の執権・北条時宗の偉業
北条時宗は18歳で幕府のトップに立ち、32歳で亡くなるまでの短い生涯を、ほぼその全期間をモンゴルおよび中国との戦争(元寇)対策に費やしました。そして元を撃退した翌年には、戦没者を弔うために円覚寺を建立しました。時宗自身もそのわずか2年後にこの世を去り、その葬儀は円覚寺で執り行われました。
梵鐘しらべ
時間 | 10月3日 9時45分、大晦日 |
打数 | ー |
前捨て鐘 | 5打 大大大小大 |
実質 | 小大の繰り返しを約10分 |
後捨て鐘 | 3打 小小大 |
隣人関係は友好的か対立的か?
近所付き合いは、昔も今も複雑なものです。お寺同士もそうなのかもしれません。例えば、京都駅前や奈良駅前には、それぞれ二つの大きなお寺が隣接しているので、これらのお寺同士の関係性について深読みしたくなります。
北鎌倉駅近くにも二大寺院、建長寺と円覚寺が存在します。一般的に、仲が悪いことを示す表現として「犬猿の仲」という言葉がありますが、実はこの表現が「建」と「円」の二つのお寺に由来するという説があります。実際どのような仲なのかはわかりません。
梵鐘ものがたり
700年前に作られた鎌倉スタイルの梵鐘
国宝のオリジナル梵鐘は今も現役で使われています。ただし撞かれる日は限られていて、基本的に10月3日のみ。開山忌の法要開始を告げる合図として、午前9時45分から10分間だけ響き渡ります。鎌倉ではよく見かけるスタイリッシュな縦長で、建長寺もよく似た形をしています。円覚寺の洪鍾は鎌倉最大で、国宝の中では最も新しいものです。
洪鍾を見守り続ける弁財天
洪鍾は時宗の死後17年が経過してようやく完成しました。お寺の僧侶250人と信者1500人が関わる大規模プロジェクトであったことが、鐘自体に刻まれた記録から明らかになっています。鐘づくりは二度失敗し、江ノ島の弁財天に祈願したところ三度目の挑戦で成功した言い伝えが残されています。鐘の横には弁天堂が建てられ、今も洪鍾を見守っています。
穴場グルメスポット『洪鍾弁天茶屋』
急峻な石段を登りきるとお茶屋さんが併設されています。洪鍾弁天茶屋では本格的な食事から甘味、飲み物まで楽しめる隠れたグルメスポットです。オススメは『かまくら梅サイダー(450円)』です。古都鎌倉は梅の名所でもあります。地元の梅を使用した冷たい飲み物と景色が、上り坂で疲れた体を癒してくれます。弁天茶屋 | 臨済宗大本山 円覚寺 (engakuji.or.jp)
60年周期で開催される洪鍾祭
古文書などの調査から、円覚寺では干支が庚子(かのえ・ね)の年に洪鍾祭が開催されてきたことが次第に明らかになっています。庚子は60年に一度の周期で巡ってくるため、そのお祭りはだいたい一生に一度しか見られない、非常に珍しいお祭りです。
経験者がいない状態で700年続く奇跡
洪鍾祭は基本的に前回の経験者がいない状態で開催されます。資料も乏しい中で700年以上にわたって受け継がれたことは奇跡と言えるでしょう。世界中を見渡しても、これほど長い周期間隔のイベントは例がなく、鎌倉の人々が円覚寺と洪鍾を大切にしてきた証と言えます。直近の庚子(かのえ・ね)は2020年でした。この時は新型コロナウイルスが流行したため、2023年10月に延期しました。このお祭りを次世代に伝えるため、今回は映像等の記録を積極的に残す取り組みも行われました。
アクセス
住所
神奈川県鎌倉市山ノ内409
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お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
- 梵鐘の愛好家
- 出張先や夜時間に梵活中
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
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