奈良・やまぞえ不動院:山添村で80年ぶりによみがえる除夜の鐘

奈良県山添村の『やまぞえ不動院』を訪問し、ご住職の前川良基様からお話を伺いました。前川様は高野山で修行を積まれた後、平成19年からこのお寺の住職を勤めておられます。お寺の住職としての務めに加え、地域活動にも熱心に取り組み、長年山添村の教育委員長を務めるなど、村の発展にも尽力されています。

本堂でお話を伺いました。

古図をもとにした伽藍整備計画がスタート

春日不動院見取図(やまぞえ不動院ホームページから)

やまぞえ不動院は様々な活動を通じて、地域の人々にとって大切な拠り所となっています。その一環として、教育委員会が所蔵する資料の中から見つかった不動院の古図を元に、お寺の境内整備を進めています。ご住職は「5年毎に一つずつ伽藍を整備する」という計画を立て、平成26年(2014年)には庫裡の建て替え、平成31年(2019年)には本堂の整備を完了させました。現在、鐘楼堂の再建が進められています。

梵鐘しらべ

時間戦前は11時に打鐘されていました。
打数
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

大人気の道の駅『茶の京都 みなみやましろ村』

近隣の観光スポットとしておすすめしたいのが、道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」です。南山城村は、宇治茶の生産地として知られる京都府唯一の村で、静かな山間に広がる美しいエリアですが、この道の駅は地元の特産品を楽しめる場所としてとても人気があります。

ここでは、抹茶スイーツや茶そば、お茶を使った加工品などが販売されており、特に「村茶屋」で提供される抹茶ソフトクリームは、道の駅の人気商品ランキング第1位を誇ります。週末には30分ほどの行列ができるほどの人気で、濃厚な抹茶の風味が楽しめる一品です。

週末には多くの観光客で賑わい、南山城村の静かな自然とともに、ここでしか味わえないお茶の魅力を堪能できる施設です。

| 【公式】道の駅お茶の京都みなみやましろ村|茶畑に一番近い道の駅 (michinoeki.kyoto.jp)

梵鐘ものがたり

平成31年(2019年)に整備された本堂(左)と今年完成の鐘楼堂(右)

鐘の音を届けたいお寺の想い

やまぞえ不動院にはかつて梵鐘がありましたが、先代の鐘は昭和19年の戦時供出で失われてしまいました。それ以来、鐘楼は瓦が徐々に崩れ、ついには使えない状態となり、かろうじて残った石垣が往時の面影を伝えるのみとなっていました。80年間、鐘の音が途絶えた状態が続いていたのです。

前川住職は教育委員会の活動に取り組む中で、「お寺の鐘を知らない子供たちに除夜の鐘を聞かせてあげたい」という想いを強めていきました。地域の人々とともに、心地よい鐘の音を響かせながら新年を迎える—その願いが、鐘楼堂再建の大きな原動力となりました。

参道の階段を登ると本堂が見えてきます

80年ぶりに梵鐘がやってくる!

鐘楼はすでに完成し、10月12日には建設用の足場が撤去されました。梵鐘は富山県高岡市で製造され、9月12日には住職立会いのもと火入れ式が行われ、翌日には試し撞きが行われました。その音色は住職の想像を上回るもので、大変満足のいくものだったとのことです。

新しく鋳造された鐘は11月8日にお寺に到着し、鐘楼に設置される予定です。そして12月7日(土・大安)の14時から、鐘楼堂落慶式が執り行われます。地域の子供たちにとって、お寺の鐘の音を聞くのは初めての経験かもしれません。この日が待ち遠しいですね。当日のスケジュールはこちらをご覧ください。鐘楼堂落慶法会のお知らせ | やまぞえ不動院 (amebaownd.com)

一足先に完成した鐘楼堂

鐘楼堂は古図に基づいて忠実に再現されました。供出された先代の梵鐘は140貫(約525kg)でしたが今回は音の響きを重視した結果、160貫(約600kg)で製造されています。鐘にはお寺の本尊である不動明王にちなんで「南無大聖不動明王」の銘が刻まれ、地域とお寺の想いを込めた鐘の音が、80年ぶりに村に響き渡ります。

除夜の鐘だけでなく、日常の中での鐘の響きは村の風景の一部として人々の心に深く刻まれていくことでしょう。

アクセス

住所

〒630-2343 奈良県山辺郡山添村春日362

ホームページ

https://fudouin.amebaownd.com/

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!

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