大阪・四天王寺:聖徳太子の黄鐘楼と鯨鐘楼

四天王寺は、大阪の天王寺駅から徒歩15分の場所に位置し、日本書紀によると今から約1400年前に聖徳太子が建立した歴史あるお寺です。聖徳太子ゆかりのお寺は日本全国に数多くあります。その中でも法隆寺と四天王寺は聖徳太子直接建立に関わった特別な存在です。四天王寺の建物は、自然災害や戦乱による被害を受けながら何度か立て直されましたが、その配置は聖徳太子の時代のまま現代に受け継がれています。

入り口の石鳥居は鎌倉時代に建てられたもの

極楽まで響く北鐘堂の黄鐘

四天王寺の特徴の一つとして、南北にそれぞれ梵鐘があることが挙げられます。北鐘堂の正式名称は黄鐘楼(おうしょうろう)で、法要の時間中は常に鐘の音が響いています。この鐘は主に檀家さんの先祖供養のために鳴らされており、その音は極楽まで届くと言われています。鐘は鐘楼の上層にあり、お坊さんが下層から綱を引いて撞くため、鐘自体を見ることはできません。

黄鐘楼ではお坊さんが鐘を撞いてます

自由に撞ける南鐘堂の鯨鐘

一方、南鐘堂の正式名称は鯨鐘楼(げいしょうろう)です。こちらも北鐘堂と同様に綱を操って上層の鐘を鳴らす仕組みです。毎朝9時過ぎにお坊さんがやってきて、お経を唱えながら鐘を撞く様子を見ることができます。それ以外の時間帯には参拝者が自由に鐘を撞くことができます。最近では参拝者が鐘を撞けるお寺は非常に少なくなっており、四天王寺は貴重な存在です。鐘は上層にあるため直接見ることはできませんが、お堂の中の売店で写真を見ることができます。幅80センチ、高さ160センチとかなり大きな鐘です。

梵鐘しらべ

時間北鐘堂(黄鐘楼)  南鐘堂(鯨鐘楼)
打数法要中       自由に撞ける
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

聖徳太子とキリストの不思議な関係

聖徳太子は、日本の歴史上非常に有名な人物であり、お札にも描かれていますが、最近の教科書では厩戸皇子(聖徳太子)という表現が使われるようになっています。これは、彼の実在性が疑われるという意見があるためです。しかし、聖徳太子とイエス・キリストには不思議な共通点があります。両者とも超人的な伝説を持っています。例えば、聖徳太子は10人が同時に話しかけても聞き取ることができたと言われています。

特に興味深いのは、両者の出生にまつわる伝説です。聖徳太子は馬小屋の前で生まれたとされ、このため「厩戸皇子」と呼ばれました。一方、聖書によるとイエス・キリストは家畜小屋で生まれ、ウシやロバに祝福されたと記述されています。このキリストの出生伝説が日本に伝わった際に、家畜小屋がいつのまにか馬小屋に置き換わったと考えられます。

聖徳太子が生まれたとされる西暦593年頃の日本には、キリストの話が伝わっていた可能性があります。また、593年はうま年であり、このことから古代日本人が聖徳太子とキリストを重ね合わせて、家畜小屋を馬小屋としたのかもしれません。このような共通点を考えると、聖徳太子とキリストの不思議な関係が浮かび上がります。聖徳太子とキリストの伝説は、時空を超えて交差し、古代の日本人の信仰や文化に影響を与えた可能性があります。

梵鐘ものがたり

60年前に再建された五重塔

戦争で消えた幻の大鐘「頌徳鐘」

フェイク画像のようなホンモノの写真

四天王寺にはもう一つ忘れてはならない梵鐘があります。それは明治39年に作られた大梵鐘です。現在英霊堂として使われているお堂は、太平洋戦争までは大釣鐘堂と呼ばれていました。ここには「頌徳鐘(しょうとくしょう)」と呼ばれる、高さ二丈六尺(約8メートル)、重さ157トンという規格外の大きさを誇る鐘がありました。重さはジャンボジェット機と同じくらいです。しかし、残念ながらこの鐘は戦時中の金属供出命令により失われてしまいました。もしこの鐘が残っていれば、現代でも世界最大の梵鐘であったことでしょう。

「頌徳鐘」の面影を伝える和菓子店

釣鐘まんじゅう以外にもたくさんの和菓子がある

四天王寺の門前町には、明治33年創業の老舗和菓子店「釣鐘屋」があります。このお店は、熟練の職人による手焼きの技を活かした製法で昔ながらの味を守り続けています。代表銘菓の「釣鐘まんじゅう」は、初代店主が世界最大の釣鐘をモチーフに考案したものです。お店の屋根には「頌徳鐘」のミニチュア模型が飾られており、実物は戦争で失われてしまいましたが、この模型が当時の姿を思い起こさせてくれます。

アクセス

住所

大阪府大阪市天王寺区四天王寺1丁目11−18

ホームページ

http://www.shitennoji.or.jp/

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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