奈良・新薬師寺:鬼の爪痕が残るミステリースポット(重文)

ならまちエリアには、古都奈良をしのばせる美しい町並みが残されています。世界遺産・元興寺から小路をのんびり歩くと10分ほどで新薬師寺に到着します。新薬師寺は奈良時代から伝わる伝統寺院であるとともに、鬼退治伝説の証拠が残るミステリースポットとして魅力的な存在です。

古い町並みにたたずむ穴場スポット

新薬師寺は奈良時代に建てられた本堂や、堂内に安置された薬師如来坐像、十二神将立像が有名です。それらの多くは国宝に指定されていて、お寺の規模は小さいですが貴重な文化財を数多く今に伝えています。

古代鍾の不思議エピソード

梵鐘も知られざる寺宝として見逃せない存在です。奈良時代の貴重な古代鍾として国の重要文化財に指定されていると共に、不思議なエピソードを持っています。梵鐘を吊り下げている鐘楼も重要文化財です。白い袴腰が映える鎌倉時代の印象的な建物です。

梵鐘しらべ

時間4月8日(修二会)、12月31日
打数
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

ミステリアスな地名「不審ヶ辻子町」

平安時代に書かれた日本最古の説話集『日本霊異記』には、元興寺における鐘楼での出来事が載っています。この話によれば、元興寺の鬼を退治するため道場法師という僧侶が登場します。道場法師は逃げる鬼を追いかけたものの、まさに不審者である鬼を途中で見失ってしまいました。その場所は今も「不審ケ辻子町」という地名が残っています。

梵鐘ものがたり

元興寺の鬼退治と薬師寺の梵鐘ミステリー

鬼退治の舞台となった元興寺ですが、今は梵鐘が無く鐘楼跡だけが残されています。経緯は不明ですが、新薬師寺の梵鐘は元興寺から移設されたものと伝えられています。信じがたいことに、新薬師寺の梵鐘には鬼の傷跡がハッキリと残っています。

梵鐘を見るチャンスは年二回

梵鐘は鐘楼の二階部分に取付けられているので普段は見ることができません。天平時代に作られた極めて貴重なものということもあり、打鐘される機会も限られています。年中行事としては、大晦日と修二会(4月8日)にその鐘の響きを体験することができます。

長い年月がもたらした深緑色の鐘は宇宙のような神秘さを纏い、特別な響きを奏でます。

梵鐘の形状は国内最古レベル

正確な製造年は不明ですが撞座という撞木のターゲットが比較的上にあること、竜頭という釣鐘部品の形状から極めて古いものと推測され、興福寺の国宝梵鐘と同系と考えられています。

その歴史的背景やミステリアスなエピソードから、新薬師寺の梵鐘は奈良の秘宝として多くの人々を魅了しています。

アクセス

住所

奈良県奈良市高畑町1352

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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