三重・大村神社:呪われた伝説の虫喰い鍾(伊賀市指定有形文化財)

三重県伊賀市阿保にある大村神社は、近鉄大阪線の青山駅から徒歩20分ほどの距離にあります。古くは奈良・京都から青山峠を越えて伊勢神宮や東海道に抜ける街道の要所で、駅から神社までの道は旧街道の風情が色濃く残っています。電車の車窓からは、大村神社が鎮座する鎮守の森が見渡せます。

古い街道の風情が残る参道

自然豊かな鎮守のミステリースポット

大村神社の創建年代は明らかではありませんが、平安時代の初め頃にはすでに存在していたと考えられています。地域の中心的な神社として古くから崇敬を集めてきました。神社名の「大村」は、旧地名である阿保村(あおむら)に由来すると思われます。駅名の「青山」も阿保山(あおやま)から読みやすい漢字が使われたようです。阿保山の森は樹齢500年を数え、ムササビ、タヌキ、フクロウ、キツツキなど貴重な動物たちが共生する自然豊かな霊場です。

梵鐘しらべ

時間いつでも撞ける
打数
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

青山銘菓「釣鐘もなか」

青山駅前の摺本(すりもと)製菓では大村神社の梵鐘に由来する「釣鐘もなか」が有名です。170円くらいでひとつから買うことができます。ここから神社まで飲食店は無いので、ここでおやつを持っていくのがいいと思います。

梵鐘ものがたり

釣鐘上部の突起は全て取れてしまった

異世界に現れる400年前の梵鐘

神社に向かう石段は自然豊かな森の中にあります。昼間でも石段は薄暗く、石灯籠には明かりが灯されています。この独特の雰囲気は、訪れる人に少し異世界に迷い込んだような感覚を与えます。大村神社には、もともと禅定寺というお寺が隣接していましたが、明治3年に廃寺となりました。明暦2年(1656年)に完成した梵鐘は、この禅定寺が所有していたものを大村神社が引き継いで管理しています。

国の重要文化財に指定されている社殿

魔鏡の呪い伝説が残る「虫喰い鐘」

この梵鐘は、三奇鐘の一つに数えられ、「虫喰い鐘」とも呼ばれています。梵鐘の上部には虫が食ったような跡があり、この鐘の伝承には次のような話があります。禅定寺の覚祐和尚が、諸国からの寄進を集めて17年がかりで鐘を完成させました。その鐘には、大和国葛城の豪家の娘が愛蔵していた鏡が鋳込まれていました。この鏡は自分の姿を映してはいけないという「魔鏡」であったが、娘はその鏡に憑りつかれていた。鏡と運命を共にした娘は、亡霊となって鐘に現れた。その翌日から虫に喰われたかのように鐘の丸い突起物が一つずつ落下し、今ではすべて無くなっています。鐘を喰う虫の正体は、娘と魔鏡の呪いという言い伝えです。この伝説にから大村神社の梵鐘は三奇鐘の一つとされているのです。

神の化身の白蛇が棲むことから「巳の神杉」と呼ばれている

そんな悲しい伝説が伝わる梵鐘ですが、現在は除夜の鐘、諸願成就の鐘として広く信仰を集めています。

アクセス

住所

三重県伊賀市阿保1555

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

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