東大寺が毎晩14回の鐘を響かせるミステリーを追う!

コラム

鐘の回数はお寺によってさまざま

いつどのくらい鐘を撞くのかというのはお寺によって様々です。大きく二つのタイプがあって、ひとつは時報として時の数を打つタイプ。例えば朝5時に5打とか。もうひとつのパターンは仏教的な意味合いで決められているタイプ。例えば煩悩の108を省略して18とするケースもあるようです。

14の由来は東大寺でも分からない

東大寺は18回打ちますが、始めと終わりの2回ずつは捨て鐘として扱うため、実質14回とされています。14回というのはかなり珍しくて、私が知ってるのはここだけです。14回の意味について、お寺でも調べていただきましたが回数についての資料が無く理由は分かりませんでした。なので自分なりに 14回の理由を考察してみました。お寺の見解では無く、あくまでも私見です。

01 お堂の数と鐘の回数の関係

東大寺の案内図に載ってるお堂は15

東大寺はこの地図の右側(東側)から、だんだんと左側へと発展していきました。長い歴史の中でお堂数が増えたり減ったり、そして小さなお堂までカウントすれば違う数字になるのかもしれませんが、主要なお堂は現状15となっています。①山手観音堂②二月堂③不動堂④法華堂(三月堂)⑤開山堂⑥三眛堂(四月堂)⑦俊乗堂⑧行基堂⑨念仏堂⑩金堂(大仏殿)⑪指図堂⑫阿弥陀堂⑬公慶堂⑭戒壇堂⑮千手堂です。

お堂の数に合わせて鐘を撞くお寺の例

福井県の永平寺では、三八日(さんぱちび)と呼ばれる3の日と8の日に修行僧がお堂(法堂・仏殿・僧堂・庫院・山門・東司・浴室)を念入りに掃除します。そして掃除が終わる15時40分に梵鐘が7回響きます。曹洞宗では掃除も修行のひとつとされ、鐘の響きに合わせて道元禅師の魂が修行の成果を確認しにお堂を廻ると考えられています。

02 二月堂『お水取り』行事としての鐘

仏教のビッグイベント『お水取り』

二月堂で毎年三月に行われる『お水取り』の一幕です。お坊さんが二月堂に上るための照明として松明(たいまつ)が灯されます。この儀式は仏教的には十一面悔過(じゅういちめんけか)と呼ばれ、実は3月1日から3月15日までぶっ通しで行われる厳しい荒行でもあります。この一連の儀式の最後に井戸から汲んだお水を十一面観音に奉納する『お水取り』を行います。

行事の始まりを告げる二つの鐘

大鐘は大仏殿から二月堂に続く道の中間にあります。普段は大仏殿や南大門、門前町に夜の響きを届けています。しかし『お水取り』の松明が上がる二週間だけ大鐘の打鍾スタイルが変わります。普段は20時ですが、この期間だけ開始の合図として19時に鳴り響きます。それに呼応するように二月堂内の梵鐘が打たれます。大鐘家は二月堂の鐘を確認したら打鍾を止め、法要が終わる深夜1時に再び大鐘が打たれます。つまり『お水取り』では大鐘が法要の一部としてお役を勤めます。

『お水取り』の荒行は朝方まで続く

松明(たいまつ)に導かれて、お坊さんが二月堂に上がると夜の法要が始まります。これは19時から翌朝4時まで続きます。お堂の中ではダイナミックな声明(しょうみょう)や五体投地、法螺貝、雅楽の演奏が行われます。お坊さんが木靴で走り回る時はすごい音と迫力です。何時間見ても飽きません。一定の手続きを踏めば一般参拝者もお堂の中で見学することができます。

『お水取り』の経文は14部構成

『お水取り』法要では特別な経文が用いられます。期間中は毎日144回、全体で2016回唱えられます。構成は①三礼文(さんらいもん)②供養文(くようもん)③如来唄(にょらいばい)④散華(さんげ)⑤呪願(しゅがん)⑥称名悔過(しょうみょうけか)⑦宝合(ほうごう)⑧観音要文(かんのんようもん)⑨五仏御名(ごぶつごみょう)⑩大懴悔(だいさんげ)⑪小懺悔(しょうさんげ)⑫破偈(はげ)⑬後行道(ごぎょうどう)⑭廻向文(えこうもん)の14のパートで構成されます。11人の僧侶が経文を通して人々の幸福を祈願します。

03 まとめ

このように東大寺の大鐘のタイミングは『お水取り』法要の進行と絶妙なコンビネーションを保っています。経文が唱えられる時は打鍾が無く、打鍾されるタイミングは法要が無い。普段の日に打鍾される14回の響きは、14部構成の経文を簡素化して『お水取り』以外の期間も人々の幸福を祈願する行事のように感じます。そして、経文を14のお堂に届けるという意味も併せて、東大寺独特の14回打鍾が成立したのかもしれません。

奈良・東大寺:古都の夜を彩る巨大梵鐘(国宝) | お寺の鐘しらべ┃お寺の鐘を巡る旅。京都、奈良を中心に日本の楽しい梵鐘(ぼんしょう)と観光情報・グルメ紹介。 (templebell.net)

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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