べらぼう第四話「雛形若菜の甘い罠」に登場した湯島の鐘
横浜流星さん主演の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」は、これまでに第四話まで放送されました。第一話・第二話では梵鐘が鳴り響くシーンが何度か登場しており、これらについては「大河ドラマ「べらぼう-蔦重栄華之夢噺」に登場する梵鐘」で考察しています。第三話「千客万来『一目千本』」では鐘の音が登場せず、今後も梵鐘は登場しないのかと思っていたところ、第四話「雛形若菜の甘い罠」では再びお寺の鐘が響きました。本稿では、この鐘の音も含め、改めてドラマにおける梵鐘の意味を探っていきます。
第四話で登場した蔦屋重三郎の書店・耕書堂(東京都立中央図書館4階企画展示室)
第四話では、平賀源内と行動を共にする浪人・小田新之助(井之脇海)の家で鐘の音が聞こえました。新之助の家は湯島にあることが明かされているため、その近くにある大きな梵鐘が候補となります。江戸時代の時鐘の中から絞り込むと、約1km離れた上野寛永寺が最有力候補です。
寛永寺は、四代将軍・家綱、五代・綱吉、八代・吉宗、十代・家治、十一代・家斉、十三代・家定が祀られる徳川家の菩提寺であり、その梵鐘は「日本の音風景100選」にも選定されています。 これまでの考察では浅草寺の可能性が高いと考えていましたが、今回、湯島で鐘が聞こえたことから、新たに寛永寺が有力候補として浮上してきました。
寛永寺の梵鐘は上野精養軒のお隣
これまでの放送で鐘の音が登場したシーンをあらためて整理します。
状況 | 場所 | 近い梵鐘 | |
第一話 | 女郎朝顔の部屋の前 | 吉原 | 浅草寺、寛永寺 |
第一話 | 八丁堀からの帰り道 公衆トイレ | 浅草と推定したが、 両国か? | 浅草寺 |
第二話 | 平賀源内を待ち伏せ 公衆トイレ | 浅草と推定したが、 両国か? | 浅草寺 |
第三話 | 登場なし | - | - |
第四話 | 新之助の家 | 湯島 | 寛永寺 |
また、これまで登場した鐘の音は、一つの鐘によるものではなく、別々の鐘である可能性もあります。その根拠の一つが、第四話で蔦屋重三郎(横浜流星)が平賀源内(安田顕)に対し、「この辺り(両国)に住んでいるのですか?」と尋ねたシーンです。二人は公衆トイレで二度も遭遇しています。同じ人物を同じ場所で偶然二度見かけたら、「この辺りに住んでいるのかもしれない」と考えるのは自然なことでしょう。
「勧進大相撲土俵入之図」ARC浮世絵・日本絵画ポータルデータベース
このことから、鐘の音がよく聞こえる公衆トイレは 両国付近だったのかもしれません。一つの梵鐘が両国・ 吉原・湯島 の3地点すべてをカバーするのは難しいため、今後のエピソードでさらなる手がかりを探したいところです。また、ドラマにおいて時折登場する梵鐘は、何かの 暗示 である可能性も考えられます。
第一話:鐘が鳴った後、朝顔さんが亡くなる(吉原の女郎が投げ込まれた浄閑寺か?)
第四話:鐘の音が登場した回で田安治察が若死する(彼は寛永寺に祀られている)
もしかすると、ドラマの中で鳴る鐘の音は 登場人物の死亡フラグ を示唆しているのかもしれません。そして、鐘の音が響くお寺が、亡くなった人物が祀られる場所であるという設定なのかもしれません。
今後の展開において、梵鐘の意味がさらに明らかになることを期待したいですね。
「浮絵東叡山寛永寺之図」ARC浮世絵・日本絵画ポータルデータベース
お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
- 梵鐘の愛好家
- 出張先や夜時間に梵活中
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