京都・鳴虎報恩寺:鳴ると不吉『撞かずの鐘』都市伝説(重文)

鳴虎報恩寺の梵鐘は平安京で最古の歴史を誇ります。重要文化財として指定された美術品であるとともに、ミステリアスな都市伝説を持つ歴史遺産の側面も持ち合わせています。鐘を撞くと不吉な出来事が起きるため日常では使われなくなり、いつしか『撞かずの鐘』と呼ばれるようになりました。今では大晦日の除夜の鐘や新住職の就任式である『晋山式』の時にのみ使われています。

梵鐘しらべ

時間大晦日、晋山式
打数
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

きわめて珍しいヘビの鬼瓦

屋根にハトがいると...

鳴虎報恩寺には、他では見られない貴重な鬼瓦が使われています。ハトのように見えるこの鬼瓦には、興味深いエピソードがあります。お寺の人たちも長い間トリが飾り付けられていると思っていたそうです。

きわめて珍しいヘビの鬼瓦

屋根を修理するために呼ばれた職人が鬼瓦を地上に降ろして観察しました。すると、ハトではなくヘビがあしらわれていたことが判明したのです。このヘビ型の鬼瓦は、他の寺や建物では見られない特別な存在と言えるでしょう。

鬼瓦模様のルーツの可能性も

屋根瓦には一般に巴紋(ともえもん)と呼ばれる模様が描かれます。これは魔除けの願いを込めたもので、元々ヘビを表していたとも言われています。そのため、鳴虎報恩寺のヘビ型鬼瓦は、巴紋のルーツである可能性があります。

梵鐘ものがたり

鐘が鳴るのは8回か9回か?

この鐘が普段は打鐘されないのは、ある悲しい言い伝えに由来します。お寺がある西陣は織物の生産が盛んなエリアです。江戸時代の機織り職人は報恩寺の鐘の音を仕事の合図として利用していました。朝の鐘は始業の合図、夕方の鐘は終業を知らせる合図として。ある日、機織り娘と丁稚小僧が夕方の打鐘回数について論争になりました。

娘は9打、小僧は8打を主張しました。小僧は自分が負けたくないという思いから、打鍾を担当する寺男に8回打つように依頼しました。娘と小僧が耳を凝らして夕方の鐘の回数を数えました。普段なら鐘は9回なのに、今日はなぜか8回しか響きません。娘はショックを受けてしまい、鐘楼で首をくくってしまったそうです。それ以降、鐘を撞くと不吉なことが起こるので撞かなくなりました。

今回お話を伺ったご住職の大橋憲宏さま

東京・京都・福岡で報恩寺の寺宝が見れるチャンス

報恩寺には他にも不思議な伝説が残されています。寺名の由来となった『鳴虎図』は中国から伝わった絵画でリアルな虎が描かれています。原画は寅年の正月三が日のみ公開(次回は2034年)ですが、原寸大のデジタル複製画はお寺に予約をすれば見られます。

豊臣秀吉はこの絵画が欲しくなり当時暮らしていた聚楽第に持ち帰りました。しかし虎の鳴き声に悩まされたため翌朝報恩寺に戻されたという逸話が残されています。多彩な歴史エピソードに満ちた鳴虎報恩寺は、ミステリアスな神秘を感じる空間です。

令和6年は浄土宗開宗850年慶讃事業の年です。報恩寺の寺宝も数点が東京と京都、福岡の三か所の国立博物館にて順次公開されます。千躰地蔵尊は京都国立博物館でのみの一般公開となります。詳しくはこちらをご覧ください。特別展「法然と極楽浄土」/【東京展】2024年4月16日(火)~6月9日(日) 東京国立博物館 平成館 (yomiuri.co.jp)

アクセス

住所

京都府京都市上京区小川通寺之内下る射場町579

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!