
梵鐘単体の評価
東京・池上本門寺:信念を貫く音と闘魂の系譜(区指定文化財)
東京都大田区にある池上本門寺(いけがみ・ほんもんじ)は、日蓮宗の大本山として知られる由緒ある寺院です。東急池上線・池上駅から徒歩約10分。参道にはくず餅屋や古風な商店が並び、どこか懐かしい風景が広がります。

お寺は「長栄山」と呼ばれる小高い丘の上に位置し、正面の石段を登って境内へ向かいます。この石段は96段あり、スポーツ選手がトレーニングに使う姿も見られるほど。この石段は、日蓮宗の信者だった戦国武将・加藤清正が寄進したものと伝えられています。
プロレスの父・力道山の墓が眠る場所
石段を登りきると、大きな三門が姿を現します。門を守る仁王像のうち、右側の像は昭和の名レスラー・アントニオ猪木をモデルに制作されたことで知られています。猪木は、日本プロレス界の父・力道山の弟子であり、師匠の眠るこの寺で門番として立つことになったのは、まさに運命的な巡り合わせと言えるでしょう。

梵鐘しらべ

時間 | 毎日朝6時、夕方6時 |
打数 | 9打 |
前捨て鐘 | 2打 |
実質 | 6打 |
後捨て鐘 | 1打 |
梵鐘ものがたり

人間国宝・香取正彦が手がけた現代の名鐘
鐘楼は境内左手にあり、現在の建物は1958年(昭和33年)に再建されたもの。中に吊るされている梵鐘は、1964年(昭和39年)に人間国宝の鋳金家・香取正彦によって鋳造されました。香取は現代を代表する梵鐘作家で、広島平和公園や比叡山延暦寺、三十三間堂など、数多くの名鐘を手がけています。池上本門寺の鐘もそのひとつで、端正な造形と深く響く音色が、訪れる人の心を静かに揺らします。

江戸期の鐘を今に伝える文化財
鐘楼の脇にはもうひとつの鐘が保存されています。これは1647年(正保4年)、加藤清正の娘であり、紀州藩主・徳川頼宣の正室となった瑤林院が寄進したもので、旧鐘楼が戦災で焼失した際に破損しました。修復されたのち、現在は大田区指定文化財として大切に保存されています。

この寺の梵鐘は、現在も毎日朝6時と夕方6時に撞かれています。都内では珍しい開けた高台から響く鐘の音は、池上の街を包み込むように鳴り渡り、訪れる人々に静けさと荘厳さをもたらしてくれます。
アクセス
住所
東京都大田区池上1丁目1−1
ホームページ
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!