京都・西本願寺:幻想的な雰囲気ただよう夜明けの梵鐘(重要文化財)

JR京都駅前の西本願寺(にしほんがんじ)は、歴史の授業で習った親鸞(しんらん)というお坊さんが開いた浄土真宗本願寺派の本山です。世界文化遺産「古都京都の文化財」にも登録されている西本願寺は、壮麗な仏教建築物や文化財戦乱の歴史を感じさせる場所でもあります。戦国時代には大阪石山へ移転し、織田信長と激戦を繰り広げました。豊臣時代には京都堀川六条に移転し、現在に至ります。幕末には新選組が駐屯したことで有名です。

新選組が本拠地を構えた太鼓楼。いまも刀傷が残されている。

幻想的な雰囲気ただよう西本願寺の朝

開門直後の御影堂(国宝)。世界最大級の木造建築物と言われています。

京都に来たけれど日中は時間が無いという方には、西本願寺のプチ観光がお勧めです。少し早起きして5時30分の開門に合わせて訪問してみましょう。開門とともに梵鐘が10回鳴らされます。梵鐘が鳴り響く早朝の境内は幻想的です。まだ薄暗い境内ですが、御影堂は明かりが灯されています。6時から始まる法要に備えて、お坊さんの長い行列が御影堂に向かいます。参拝客がいない早朝の西本願寺ですが、お寺は既に活動が始まっていて特別な雰囲気に包まれています。

梵鐘しらべ

時間朝5時30分
打数10打
前捨て鐘
実質9打
後捨て鐘1打

信長と互角に戦った仏教勢力

鎌倉時代の中頃、浄土真宗は親鸞によって開かれました。ナムアミダブツと唱えれば救われる教えは、急速に広がって、仏教の中で代表的な教団の一つとなりました。教団が大きくなるにつれて、時の権力者や他の仏教勢力との摩擦もたびたび起きるようになりました。

教団が発生した当初は『大谷本願寺』として京都で活動していましたが、比叡山との関係から北陸へ移転し、再び京都山科に再興。その後、大坂石山へと移転しました。石山では、天下統一を目指す織田信長と11年にわたる石山戦争を繰り広げ、最終的には信長と和議を結びました。第11代顕如(けんにょ)は石山本願寺を退去し、和歌山鷺森、さらに和泉(大阪府)貝塚の願泉寺を経て、大坂天満へ移りました。1591年、秀吉の計画に基づいて本願寺は再び京都に帰りました。その後、本願寺は東(大谷派)と西(本願寺派)に分かれて活動するようになりました。

梵鐘ものがたり

軒下の鮮やかな装飾を見ることができる鐘楼(重要文化財)

重要文化財の鐘楼と梵鐘

江戸時代前期の1618年(元和4年)に建立された鐘楼は、国の重要文化財に指定されています。軒下の鮮やかな装飾を見ることができます。打鐘は毎朝5時30分のほか、集会鍾(しゅうえしょう)として大きな法要が行われる時の僧侶への合図として打たれることがあります。例えば、11月27日13時、1月12日朝9時に打鐘されていました。大きな法要の1時間前に打鐘することが多いようです。

総合案内所に展示してあるオリジナル梵鐘(重要文化財)。龍頭が木でできている。

お寺と共に旅を繰り返した梵鐘

総合案内所は朝5時30分から開いて冬の朝も暖かく迎えてくれます。展示室にはオリジナルの梵鐘が飾られています。この梵鐘に刻まれている銘によると、もともとは京都の広隆寺で使われていたそうです。広隆寺は平安京ができる前から既に存在した京都で最も古いお寺のひとつです。製作時期は不明ですが、広隆寺の記録によると1165年6月13日に鐘を取り付けたことが分かっています。梵鐘の形が平等院の国宝梵鐘とよく似ていることから、同時期に同じ作者による梵鐘ではないかと考えられています。

総合案内書は朝5時30分から営業

室町時代の1542年、広隆寺はこの鐘を230貫で石山本願寺に売却しました。江戸時代前期の1620年(元和6年)には西本願寺に移されました。移転を繰り返した影響で竜頭が損失し、装飾的に木製の竜頭が使われています。現在、鐘楼で使われている鐘は平成8年に鋳造された二代目です。

アクセス

住所

京都府京都市下京区堀川通花屋町下る本願寺門前町

ホームページ

https://www.hongwanji.kyoto/

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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