京都・知恩院:大晦日のテレビでおなじみの大梵鐘

大晦日の除夜の鐘。その中で一番有名なのが知恩院の大梵鐘ではないでしょうか。十七人のお坊さんが掛け声とともに大鐘を撞く光景は日本の風物詩と言えるでしょう。現地で見たい人も多いと思いますが当日は大変な混雑です。今回はこの鐘をゆっくり楽しめる方法を紹介します。

映画「ラストサムライ」でトム・クルーズが登った石段

知恩院の大鐘は三大梵鐘のひとつ

この大鐘の重量は約70トンに及びます。三大梵鐘とよばれるものとしては、京都・方広寺の約80トン、奈良・東大寺の約26トンの鐘があります。方広寺の鐘は徳川家康の命令で豊臣家が資金を捻出しました。完成した鐘に刻まれた銘文「国家安康」「君臣豊楽」は家康を呪うものと解釈され、大阪冬の陣に発展しました。一方、東大寺の鐘は他二つに比べると小さいものの、1000年以上前に作られたことを考えれば、その規模は驚異的で三大梵鐘にふさわしいものです。

今もはっきり読み取れる方広寺の銘文

浄土宗最大の法要「御忌」について

三門は夜間ライトアップされる

知恩院の大梵鐘は大晦日と御忌(ぎょき)の期間中にのみ使われます。御忌とは天皇・皇后の法事に対して使われる言葉ですが、勅使により法然の法事にも使われるようになりました。かつて御忌は法然の命日1月25日までの一週間でしたが、今は4月18日~4月25日に執り行われます。この期間中は毎朝8時に地元の植木屋さんが大梵鐘を鳴らしてくれます。

与謝蕪村はこんな俳句を残しています。

御忌の鐘 ひびくや谷の 氷まで

梵鐘しらべ

時間御忌 朝8時   大晦日 22時40分
打数20打       108打
前捨て鐘
実質18打       108打
後捨て鐘2打

情熱のオールナイトイベントMNNIG

御忌の一週間は多くの法要が執り行われます。その中でも特に「ミッドナイト念仏in御忌(MNNIG)」は一般参加型のお勧めイベントです。予事前申込みは不要。イベント自体は夜19時~朝7時まで開催されますが、途中参加・途中退出OKです。もちろん無料で参加できます。

通常非公開の国宝三門楼上に入ることができます。楼上はお堂になっていて十六羅漢像などたくさんの仏像が安置されています。イベント中は数十人の参加者が声を合わせて「南無阿弥陀仏」と唱えながら、ひたすら木魚を打ちつづけます。

知恩院のナイトイベント、MNNIGに参戦! | お寺の鐘しらべ┃お寺の鐘を巡る旅。京都、奈良を中心に日本の楽しい梵鐘(ぼんしょう)と観光情報・グルメ紹介。 (templebell.net)

梵鐘ものがたり

三門楼上から京都市街の夜景

静かな朝の打鐘

御忌の鐘は植木屋さんが担当します

「えーい、ひとーつ、そーれ!」

大晦日のテレビ中継が大々的に放映される一方、御忌の鐘はあまり知られていません。朝8時前に訪れた時は、見物人がゼロの状態でした。しばらく待っていると三人の植木屋さんが現れて、淡々と撞木をセットして鐘を打ちます。鐘は1分間隔でゆっくり18回鳴り響きます。音を聞きつけた外国の方がチラホラと訪れるくらいで、とても落ち着いた雰囲気の打鐘でした。

もともとは御忌に使うための鐘だった

大梵鐘へ続く登山道

知恩院の大梵鐘はもともと御忌のためのものでした。御忌はそれくらい重要な法要で、御忌以外の期間は毎日勢至堂の梵鐘が朝と夕方に打鍾されます。除夜の鐘の習慣は実は意外と新しく、知恩院では昭和になってから大梵鐘を使うようになりました。法隆寺など古いお寺では、昔からの習慣を守って除夜の鐘を行わないところもあります。

アインシュタインの音波実験

東大寺で鐘の下を見学する人たち

知恩院はアインシュタインが科学実験した場所としても知られています。梵鐘の真下で音を聞くと、音波が互いに打ち消し合って無音になると仮説し、実際に鐘を打って検証したそうです。無音になるポイントを特定するのは難しいみたいですが音がかなり小さくなることは確認できるみたいです。このエピソードは海外でも有名で、外国人のグループが東大寺でマネしているのを見たことがあります。東大寺では打鐘中でも鐘の下に立ち入ることが許されています。

アクセス

知恩院の大鐘楼は、山門から男坂または女坂を登り、大きなお堂があるメインエリアを経てさらに山道を登った場所にあります。大梵鐘に至る道はけっこうな山登りです。日中であれば山門からメインエリアまでシャトルバスを利用することもできます。

住所

京都府京都市東山区林下町

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!

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