大谷翔平と本塁打記録の行方ー神の領域へ
2025年のメジャーリーグは、ロサンゼルス・ドジャースが2年連続でワールドチャンピオンという歴史的なシーズンになりました。その中心にいたのは言うまでもなく大谷翔平選手。打者としてキャリアハイの55本塁打、投手としても要所でチームを支える圧倒的な存在感を示し、3年連続・通算4度目のMVPを手にしました。

渡米後の大谷選手は“規格外”を象徴する存在になりました。日本時代は5シーズンで48本、MLBでは毎年ホームラン王争いに絡みながら8シーズンで280本。
この先――大谷選手が大きな離脱なく、今の活躍を維持したとしたら?バリー・ボンズ(762本)、ハンク・アーロン(755本)、ベーブ・ルース(714本)などスーパーレジェンドに迫ることができるのでしょうか?
彼らの「ピーク期」「エイジングカーブ」「長期的な活躍」を手がかりに、大谷翔平という“規格外”の選手がどんなキャリアカーブを描きうるのか――あくまで夢のある読み物として探ってみたいと思います。
ホームラン打者・大谷翔平31歳の現在地
2025年、31歳シーズンを終えた 大谷選手は、メジャーリーグ(MLB)通算で280本塁打に到達しました。このタイミングを、球史に名を刻むスラッガーたちと比較してみます。歴代トップ5と、彼らの31歳時点の途中経過は以下の通りです
| 31歳時点の本塁打数 | 大谷との差 | 通算本塁打数(歴代順位) | |
| A・ロドリゲス | 464本 | 184本 | 696本(5位) |
| A・プホルス | 455本 | 175本 | 703本(4位) |
| B・ルース | 424本 | 144本 | 714本(3位) |
| H・アーロン | 366本 | 86本 | 755本(2位) |
| B・ボンズ | 334本 | 54本 | 762本(1位) |
31歳の段階では、上記5人と比べれば見劣りしますが、前提条件が大きく違います。
- MLBデビューが24歳と遅い
- NPBでの5年間(48本)は 含まない
- 二刀流として投手稼働がある
- 怪我による離脱期間が複数シーズン存在
それにもかかわらず280本到達は、MLB移籍後の本塁打率が歴代でも異常な水準であることを示します。一打席あたりの本塁打率は、歴代トップ5と比べても10%ほど高く推移しています。
歴代トップ10が示す「ピークと衰え」のリアル
歴代のホームランバッターたちが、32歳以降どのような歩みを辿ったのかを整理してみました。対象にしたのは、世界の通算本塁打記録トップ10。日本プロ野球からも1位:王貞治(868本)、8位:野村克也(657本)が名を連ねています。

彼らの 年齢別本塁打率(=HR/PA:1打席あたり本塁打が生まれる確率) をプロットしたグラフを見ると、共通点がはっきりしてきます。多くの選手は、およそ25歳〜35歳 をピークとしてその後は下降線――いわゆる“エイジングカーブ”――に入ります。つまり、これは大谷選手に限らず ホームラン記録を狙ううえでの普遍的な条件 を示しています。
- ピークをいかに長く維持するか。
- そして、衰えのカーブをいかに遅く、緩やかにできるか。
本塁打記録を伸ばすポイントは、この2点に大きく影響されます。
大谷選手のピーク期間について
まずは大谷選手の今後5年間について予測します。
過去3年間(29〜31歳)の本塁打数は 44本、54本、55本 と推移し、この期間の平均は 51本 でした。この実績と年齢を踏まえると、大谷選手はいままさにピーク期にあると判断できます。ここでは年間 50本 をピーク値とします。
次に、ピークからの低下ペースを設定します。Ray Fair(2008) の推計によると、MLB打者のOPSは 28〜37歳の9年間で約5.6%の低下が観測されており、年あたり約0.6%の減少とみなせます(OPS 0.800 → 0.755)。これを本塁打数の低下率として代用し、32歳を50本として直線的に年0.6%ずつ低下すると仮定します。
この前提で計算すると、32〜36歳の本塁打予測は次の通りになります。
| シーズン | 年齢 | 本塁打推計 | 通算推計 |
| 2026年 | 32歳 | 50.0本 | 330本 |
| 2027年 | 33歳 | 49.7本 | 379本 |
| 2028年 | 34歳 | 49.4本 | 428本 |
| 2029年 | 35歳 | 49.1本 | 477本 |
| 2030年 | 36歳 | 48.8本 | 525本 |
OPSの低下率をそのまま当てはめた結果、32〜36歳の5年間ではほとんど年齢効果が出ないという、きわめて緩やかな下降線になりました。
この期間の合計は約 245本 で、現在のMLB通算 280本(2025シーズン終了時点)に加えると、36歳終了時点で通算525本に到達する計算です。この時点でなんとB・ボンズのペースを上回ります。
| 36歳時点の本塁打数 | 大谷との差 | 通算の本塁打数 | |
| A・ロドリゲス | 629本 | 104本 | 696本(5位) |
| B・ルース | 611本 | 86本 | 714本(3位) |
| H・アーロン | 592本 | 67本 | 755本(2位) |
| A・プホルス | 560本 | 35本 | 703本(4位) |
| 大谷翔平 | 525本 | ー | ー |
| B・ボンズ | 494本 | -31本 | 762本(1位) |
キャリア終盤のエイジングカーブとボンズ効果
36歳終了時点で大谷選手が 通算525本 に到達すると仮定すると、次に問題になるのは 37歳以降にどれだけ本塁打を積み上げられるかです。ここでは新たな推測をせず、歴代上位スラッガーの「37~40歳の実績値」だけを使って、大谷選手が到達しうる範囲を事実ベースで確認します。
■ 歴代スラッガーが「37〜40歳」で積み上げた本塁打
バリー・ボンズ:209本− 37歳:73本 / 38歳:46本 / 39歳:45本 / 40歳:45本
ハンク・アーロン:141本− 37歳:47本 / 38歳:34本 / 39歳:40本 / 40歳:20本
アルバート・プホルス:96本
ベーブ・ルース:103本
このようにMLBのスーパーレジェンドたちはキャリア最終盤においても主力級の打撃成績を維持しています。特にボンズはすさまじく、36歳時点では500本に届いていなかったのが、37歳73本を皮切りに恐るべきペースで量産しました。大谷選手がこの「ボンズ効果」を発揮できるかどうかが、偉大な記録到達の可否を大きく左右するでしょう。
ボンズ効果の70%を大谷選手に当てはめると:525 + 206 x 0.7 = 671本
714本(ベーブ・ルース) までは「あと43本」
755本(ハンク・アーロン)までは「あと84本」
762本(バリー・ボンズ) までは「あと91本」
40歳 671本、その先に広がる“神の領域”
もし大谷選手が40歳の時点で通算671本に到達していれば、これはA・ロドリゲスに続く歴代6位に到達します。ドジャースとの10年契約を終える節目の年でもあり、この時点で既に「伝説」と呼ばれる存在になっているはずです。実際、ルースとロドリゲスはいずれも40歳でユニフォームを脱いでおり、大谷選手がここで一区切りをつける可能性は十分にあります。41歳から先は、メジャーリーグの歴史の中でもごく限られた者しか踏み入れたことのない“神の領域”です。
しかし大谷選手がこの段階で、ルースの714本を最終到達点と考える可能性はあります。おそらく日本人だけでなく全ての野球ファンがそれを期待するでしょう。残りは43本。3シーズンあれば十分に狙える数字であり、身体の維持と出場機会さえ確保できれば射程圏です。一方で、アーロンの755本やボンズの762本になると話は一変する。40歳以降に“年30本以上”を打ち続けることが前提となり、これは極端にハードルが高い。

それでも、40歳で675本という地点に立った選手には、挑戦する資格がある。そこで野球を続けるか、どこまでリスクを取るか、そして投手としてのキャリアをどのように位置づけるか—。大谷翔平が下す判断は、記録の行方だけでなく、スポーツの在り方そのものを揺さぶるテーマとなり、彼の物語は40歳を過ぎてもなお、世界中の注目を集め続けることでしょう。
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