「いざいざ奈良」キャンペーンで楽しむ奈良の魅力

「いざいざ奈良」はJR東海が展開している奈良観光キャンペーンで、俳優の鈴木亮平さんが旅人として奈良の魅力的なスポット巡ります。旅人のとても楽しそうなテレビCMや駅のポスターが自然と旅心をくすぐられます。静寂な空気に包まれた奈良の寺社や自然を背景に微笑む鈴木さんの姿は、日常の喧騒を忘れてスピリチュアルな体験をしたくなるきっかけになるでしょう。

キャンペーンのオープニングは東大寺大仏殿でした

このキャンペーンの最大の特徴は、知ってそうで知らなかった奈良の魅力を改めて気づかせてくれる点にあると感じます。ほとんどの人が京都で降りてしまうため、少し足を延ばした人だけが体感できる場所と言えるでしょう。

キャンペーンで登場したスポット

  • 2022年 東大寺・ならまち編 東大寺 大仏殿と二月堂。ANDO HOTEL。など
  • 2022年 吉野編 金峯山寺 蔵王堂と金剛蔵王大権現。門前町。中井風月堂の吉野本葛。など
  • 2023 春日大社・高畑編 春日大社。春日山原始林。奈良ホテル。など
  • 2023年 西ノ京・平城宮跡編 唐招提寺。平城宮跡。薬師寺。マリオットホテル。など
  • 2024年 大和四寺編 長谷寺 登廊と尾上鐘。門前町の草もち。安倍文殊院。など
  • 2024年 興福寺編 興福寺 南円堂と中金堂。阿修羅像。若草山。NIPPONIA HOTEL。など

奈良旅行にありがちな課題とその実際

課題1:奈良は遠い?

「京都を素通りして奈良に行くのはもったいない」。そう思う方は少なくないでしょう。また、「京都よりもさらに1時間かかる」という距離感も奈良旅行のハードルに感じられるようです。たしかに、京都駅から奈良へ向かうにはJR奈良線(快速)か近鉄奈良線(急行)で約60分かかります。ただし、いくつかメリットもあります。

具体的には以下の点を知っておくと便利です。

  • 新横浜6:11発の「のぞみ」に乗れば、8:02に京都に到着。京都の観光地が開店する前の時間帯を移動に充てれば、時間の無駄がありません。奈良到着が朝9時ごろになるので、観光の時間も十分確保できます。
  • 京都駅では、新幹線ホームからJR奈良線ホームへ直結する専用改札があります。また、近鉄京都駅も新幹線の中央改札の目の前でアクセス抜群。どちらも乗り継ぎに要する時間は5分程度です。

興福寺編で登場した中金堂

東大寺、興福寺、春日大社、薬師寺、唐招提寺を訪れるなら近鉄奈良駅へ。途中、右側車窓には当時の五重塔も見え、移動中から景色を楽しめます。一方、法隆寺、大神神社、長谷寺を訪れるならJRを使うと便利です。JR奈良駅から乗り継いでも10時ごろには到着可能です。


課題2:宿泊や食事の選択肢が少ない?

奈良には宿泊施設や飲食店が少ないと思われがちですが、これは必ずしも正確ではありません。

  • 宿泊施設
    「いざいざ奈良」で紹介されていたマリオットホテル、奈良ホテルのような高級リゾートはもちろんのことですが、リーズナブルな価格帯の出張でも使える清潔感のあるビジネスホテルもたくさんあります。私はよく駅近のビジネスホテルを利用しますが、5,000円~10,000円くらいの価格帯でアクセスも快適。宿泊事情は京都と遜色ないと思います。
  • 食事
    京都のような華やかさには欠けるかもしれませんが、親しみやすく、地元の味が楽しめる場所がたくさんあります。例えば、東向き商店街や三条通りには、家族連れでも入りやすいお店や、一人旅でも安心して入れる定食屋さんがたくさんあります。私のオススメはJR奈良駅にある「奈良県アンテナショップ」です。地元の食材を生かした店内のレストランは大人気で入店できないこともあり要注意です。テイクアウトできるわらび餅は吉野葛を使っていて、東京で手に入るものとは別格です。

JR奈良駅ビル内の奈良県アンテナショップ

課題3:京都へのリピーター心理

「前回の京都旅行が楽しかったからまた行きたい」という気持ちは、私自身もよくわかります。一度では回りきれないほど魅力的な観光地が詰まった京都は、本当に素晴らしい街です。でも、もし皆さんがこれまで奈良に行ったことがないのなら、それは本当に勿体ないと感じます。京都を通り過ぎて行くからこその素晴らしい体験が待っています。

もし5回チャンスがあるとすれば「京都3回、奈良2回」くらいの配分がいいと思います。奈良を一度でも訪れると、「また奈良に行きたい」と思う気持ちがきっと湧いてくるはずです。

「いざいざ奈良」スポットレビュー

2022年 東大寺・ならまち編

2022年にテレビ放送されたJR東海のキャンペーン「いざいざ奈良」第一弾、「東大寺・ならまち編」について感想を書いてみたいと思います。

鈴木亮平さんが最初に訪れたのは、言わずと知れた奈良を象徴するランドマーク、東大寺の大仏殿です。これ以上ない「奈良らしさ」を表現する場所として、キャンペーンのオープニングにふさわしい選択だったと思います。続いて二月堂へ足を運び、ならまちを散策。さらに宿泊先のホテルからは奈良の街並みを見下ろすシーンがあり、旅情を掻き立てる演出が印象的でした。

鈴木亮平さんはインタビューで「奈良を訪れたのは20年ぶりで、東大寺も大仏殿しか行かなかった」と語られていました。これには多くの方が共感したのではないでしょうか。確かに、大仏殿の圧倒的な存在感に感動し、それで満足して次の観光地へ向かってしまうというのが一般的な旅の流れかもしれません。しかし、それだけでは少しもったいない気がします。

大仏殿から少し足を延ばして二月堂まで登ると、美しい景色が広がります。二月堂は24時間拝観が可能なので、昼間だけでなく夜景も楽しめるスポットです。また、大仏殿と二月堂の間にある大鐘楼では夜20時に鐘の音が響き、静かな奈良の夜をさらに趣深いものにしてくれます。

夜の二月堂

2022年 吉野編 

2022年にテレビ放送されたJR東海のキャンペーン「いざいざ奈良」第二弾、「吉野編」についての感想を書いてみたいと思います。このエピソードでは、再び鈴木亮平さんが旅人役を務め、秘境、吉野の魅力を存分に伝えていました。

鈴木亮平さんのインタビューでの言葉が印象的でした。「吉野は一番行きたかった場所。すごい所なのに誰もいないから独り占めできる。みなさんも吉野で直接自分なりのオススメを探して欲しい。」この発言は吉野の特徴を的確に表しています。

実際、奈良を訪れるにもハードルがありますが、吉野はさらにその先。奈良市内の唐招提寺、薬師寺、長谷寺、橿原神宮といった有名スポットをスルーして、奈良からさらに約2時間をかけて行かなければなりません。しかし、この努力をする価値は十分にあります。その理由は、鈴木亮平さんが言う通り「独り占め」できる贅沢に他なりません。

吉野は秘境と言われる一方、歴史的には南朝の都が置かれた由緒ある場所です。現在も蔵王堂を中心にした門前町には多くのお店が並びますが、全体的に静かな雰囲気が漂っています。鈴木亮平さんが訪れた吉野本葛のお店も、もし東京にあれば大行列必至の人気店でしょう。それが、吉野ではほど良い賑わいの中で気軽に楽しめます。

また、青いお姿が特徴的な蔵王大権現は期間限定の公開となるため、見られる機会はそう多くありません。鈴木亮平さんが目の前でその尊顔に接したのは、本当にうらやましい限りです。

吉野は奈良の中でも特に訪問に手間がかかる場所ですが、それを補って余りある魅力を持っています。静けさと贅沢な体験を求める方には、ぜひ訪れていただきたい場所です。

藤原道長も参詣した蔵王堂(国宝)

2023年 春日大社・高畑編

2023年に登場した第三弾は「春日大社・高畑編」です。このエピソードでは、春日大社とその奥に広がる春日原始林を鈴木亮平さんが散策する姿が紹介されました。

春日大社は言わずと知れた奈良を代表する神社で、その荘厳な雰囲気は訪れる人を魅了します。さらに、その奥に続く春日原始林では、自然と静けさを堪能できる贅沢な時間を過ごせます。

続いて鈴木亮平さんは高畑の旧志賀直哉邸を訪れています。志賀直哉邸は、その落ち着いた佇まいと趣が素晴らしく、高畑エリアの静かな魅力を象徴しています。

宿泊はおそらく奈良ホテルだったのではないでしょうか。私はまだ訪れたことがありませんが、奈良を代表する高級ホテルとして有名です。アインシュタインが演奏したというピアノが今も現存しているそうで、一度行ってみたい憧れの場所でもあります。

春日大社

2023年 西ノ京・平城宮跡編

2023年後半には、「西ノ京・平城宮跡編」が放送されました。この回では唐招提寺、平城宮跡、そしてマリオットホテルが取り上げられました。

鈴木亮平さんが特に印象に残っていると語ったのが唐招提寺の苔庭でした。鑑真和上御廟へと続く林道に広がる一面の苔の風景は、静けさと美しさが調和する特別な空間です。この苔庭のスナップショットはポスターにも使用され、キャンペーンを象徴するスポットとなりました。

一方、平城宮跡はユニークな世界遺産として取り上げられました。この遺跡は、近鉄奈良線の車窓からも望むことができる特異な立地が特徴です。鉄道が世界遺産の登録範囲内を貫いている例は非常に珍しく、これは平城宮跡が世界遺産に登録される以前から鉄道が敷地内を走っていたためです。このような歴史と現代が交錯する風景も、奈良ならではの魅力と言えるでしょう。

鑑真和上御廟につながる林道

2024年 大和四寺編

2024年に登場した第五弾は「大和四寺編」で、注目の長谷寺が登場しました。鈴木亮平さんはインタビューで「信仰」「隠れ里」という言葉を使われ、まさに長谷寺の魅力を的確に表現されていました。

首都圏の人々にとって「長谷寺」といえば鎌倉を思い浮かべる方も多いかもしれません。もちろん鎌倉の長谷寺も素晴らしい場所ですが、奈良の長谷寺はその歴史の深さと信仰の厚さが特別です。399段の登楼を経て辿り着く本堂からの景色は、国宝の舞台から見渡す圧巻の眺望を堪能できます。源氏物語や枕草子にも描かれた由緒あるこの古刹は、山全体が一つのお寺として機能していて、「隠れ里」と言われる通りまだ訪れる人は多くありません。

かつては周辺に旅館もたくさんあったそうですが、現在では三軒だけが残っています。他の観光地のようなインバウンドの波はそれほど押し寄せておらず、大寺の静寂を楽しめる貴重な場所となっています。これから注目される前に、この静かな状態の長谷寺を訪れるのも特別な体験になるでしょう。

鈴木亮平さんのポスターと同じ場所で撮影した長谷寺の登楼

2024年 興福寺編

若草山と鹿

2024年後半には最新作「興福寺編」が放送開始されました。このエピソードでは、奈良の象徴とも言える興福寺がフィーチャーされています。近鉄奈良駅から徒歩5分という抜群の立地もあり、多くの人々にとって馴染み深いスポットが数多く登場しました。

南円堂から中金堂、そして有名な阿修羅像と見どころ満載。さらに、ならまちを散策してランチを楽しみ、夕暮れには若草山の景色、宿泊はNIPPONIA HOTELでの滞在が描かれています。全体的に冬の一日をテーマに、抑えめの照度で静謐な雰囲気が漂うストーリーでした。

さて、2025年はどのエリアが登場するのでしょうか。奈良にはまだまだ取り上げられていない名所が数多く残っています。例えば、斑鳩編で法隆寺、葛城・五條編で榮山寺や當麻寺、生駒編で朝護孫子寺などが予想されます。今後の展開に期待が高まりますね。

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

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