御忌の期間は毎朝8時に鐘が鳴る
京都・萬福寺:宇治に伝わる中国禅寺の合山鐘(重要文化財)
京都府宇治市にある黄檗宗大本山の寺院「萬福寺(まんぷくじ)」は、中国から渡来した僧「隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師」によって1661年に開かれました。その建築様式や儀式作法などには、中国明朝の影響が色濃く残っています。このような中国様式のお寺はほどんど失われてしまい、創建当初の姿のままを今日に伝える萬福寺は極めて貴重な存在です。
中国明朝時代の影響が残る建築様式
中国明朝の面影を残す貴重なお寺
萬福寺の境内は、中国明朝の様式を取り入れた伽藍配置となっていて、創建当初の姿を今日に伝える貴重な禅寺です。法堂・大雄宝殿・天王殿は2024年10月に国宝指定されました。各建物は屋根付きの回廊で結ばれていて、南側には鐘楼、伽藍堂、斎堂、東方丈があり、北側には鼓楼、祖師堂、禅堂、西方丈が対称に並んでいます。仏像も中国を感じさせるスタイルが多く、まるで中国にいるかのような異国情緒を味わうことができます。
龍の背の鱗をモチーフ化した中国式の参道
隠元が日本に伝えたからインゲン豆
萬福寺を総本山とする黄檗宗のお寺では随所に中国的な特徴が見られます。例えば、馴染み深い般若心経も中国式のイントネーションで唱えられます。隠元禅師は、隠元豆(いんげんまめ)や孟宗竹(たけのこ)、蓮根(れんこん)などを日本にもたらし、食文化にも影響を与えました。また、宗教儀礼に使用される木魚などの法器も、中国の影響を受けています。
中国様式の木魚はリアルな木魚
梵鐘しらべ
時間 | 拝観時間内ならいつでも |
打数 | 自由に撞ける |
前捨て鐘 | |
実質 | |
後捨て鐘 |
秋の恒例「黄檗ランタンフェスティバル」
萬福寺では、毎年秋に「黄檗ランタンフェスティバル」が開催されます。この夜祭は2022年から始まり、10月初めから12月初めまでの2か月間行われます。通常の拝観時間は9時~17時ですが、フェスティバル期間中は21時まで拝観可能です。
フェスティバルでは、大小30種類の中国ランタンが萬福寺の境内を彩り、中国の雰囲気を一層引き立てます。ランタンの柔らかな光が、寺院の歴史ある建物や庭園を幻想的に照らし出し、訪れる人々に特別な夜のひとときを提供します。
また、中華料理の夜店が並び、訪れる人々は本格的な料理を手軽に楽しめる他、週末には伝統芸能ショーや音楽コンサートなどのイベントも開催されます。
萬福寺は、日本でも特に和風の風情を感じる京都に位置していますが、境内に一歩足を踏み入れると、まるで中国にいるかのような異国情緒を味わうことができます。
梵鐘ものがたり
下部に波打たせ模様がある中国鐘
中国と日本の折衷「合山鐘」
萬福寺の梵鐘は、開山堂から天王殿へ向かう回廊に吊るされています。中国様式と日本様式の折衷で「合山鐘(がっさんしょう)」という名前が付けられています。
波状うねり八葉型と呼ばれる形状で、鐘の下部に波状のうねりがある点が特徴です。萬福寺を創建した隠元隆琦は文人としても評価が高く、本人が選銘した鐘は4口しか現存していないことも合わせて、国の重要文化財に指定されています。いま回廊に吊るされている合山鐘は1697年に作られたものです。
中国の弥勒菩薩はこんなお姿!
三門を 出れば日本ぞ 茶摘み唄
江戸時代の歌人・菊舎は萬福寺で中国の雰囲気に浸ったあと、三門の外に広がる茶畑の風景を見て、そこが日本であることに気づかされる情景を俳句で表現しました。
萬福寺は、その中国風の建築や文化、歴史的背景から、日本の他の仏教寺院とは一線を画す独特の魅力を持っています。
アクセス
住所
京都府宇治市五ケ庄三番割34
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お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
- 梵鐘の愛好家
- 出張先や夜時間に梵活中
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
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