奈良・薬師寺:シルクロードの終着点に伝わる壊れ鐘(重要文化財)

奈良市の中心地から約2キロ離れた西ノ京エリアに位置する薬師寺は、ヨーロッパ、中東、そしてアジアの文化の影響が色濃く残る寺院で、「シルクロードの終着点」とも呼ばれています。薬師如来像の台座には、ギリシャの葡萄唐草文様、ペルシャの蓮華文様、インドの像、中国の四神が彫刻され、かつて海外と文化的な繋がりを持っていた国際都市・平城京の面影を感じることができます。薬師寺は古代日本における世界との窓口ともいえる存在で、その貴重な文化的価値から「古都奈良の文化財」の一部としてユネスコの世界遺産にも登録されています。

台座にあしらわれたギリシアの葡萄唐草文様

梵鐘しらべ

時間毎日5時、17時
打数5 打
前捨て鐘-
実質5 打
後捨て鐘-

梵鐘ものがたり

奈良時代から伝わる古代鍾

薬師寺の梵鐘は国の重要文化財に指定されています。この梵鐘には銘がなく、正確な時代を特定することは困難ですが、東大寺の鐘と形が非常に似ていること、古代鍾の特徴を持っていることから、奈良時代かそれ以前に作られたものと思われます。さらに、薬師寺に伝わる古文書によると、興福寺別院の建法寺の梵鐘が薬師寺に引き取られたという記述があり、いま薬師寺に残されている鐘が興福寺から伝わったと考えられています。朝鮮半島に存在した百済国の王様から贈られたという説もあります。

東大寺と同じ作者によるものと考えらえれている

朝5時と夕方5時に響く『西ノ京割れ鐘』

この梵鐘は「西ノ京割れ鐘」と呼ばれています。専門的な話になりますが、撞き座(つきざ)と竜頭(りゅうず)という部分には奈良時代の特徴が残っていて、約1300年前に鋳造された貴重な古代鍾であることがわかります。享禄元年(1528年)の火災で落下し、大きなヒビ割れが生じました。それでも大切に使い続けられ、いつしか「西ノ京割れ鐘」と呼ばれるようになりました。現在は国の重要文化財に指定されています。現在、オリジナルの梵鐘は保蔵庫に保管されていますが、昭和51年には、金堂の落慶を記念して、同じ規模で新しい梵鐘が鋳造されました。

1300年前の創建当初から唯一現存する東塔

現在使用されている二代目の梵鐘は、朝夕5時に5回打たれ、時を知らせています。どちらも参拝時間外のため、その姿を見ることはできません。今回は特別な許可を得て、夕方5時の打鐘の様子を撮影しましたので、下記のYouTubeリンクからダイナミックな鐘の音色をお楽しみください。

古代ロマンとシルクロードの面影を求めて、薬師寺を訪れてみてはいかがでしょうか?近鉄橿原線の西ノ京駅から徒歩2分、またはJR奈良駅から路線バスで約15分ほどでアクセス可能です。

アクセス

住所

奈良県奈良市西ノ京町457

ホームページ

https://yakushiji.or.jp/


お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

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