梵鐘単体の評価
京都・六道珍皇寺:冥界とつながるミステリースポットの『迎え鐘』
今回は京都市内の六原エリアにある六道の辻に佇む六道珍皇寺を訪問します。六道の辻というのは異世界との交差点で、平安時代は異世界へ旅立った人々と最期の別れを惜しむ場所でした。このお寺に祀られている小野篁(おののたかむら)は朝廷の高官として活躍した人物で、百人一首に選ばれた歌人でした。その一方で、夜間は閻魔大王のアシスタントとして働くために『冥土通いの井戸』や『黄泉がえりの井戸』を使って現世と冥界を日々往来したというミステリアスな伝説が伝わっています。
お寺の門前町は案外ハッピーな雰囲気
冥界との交信ができる『迎え鐘』
『迎え鐘』はその音色が冥界まで響き渡るとされ、冥界から霊を呼び寄せる不思議な鐘です。梵鐘は鐘楼の内部に閉ざされて、その姿を直接見ることはできません。梵鐘の真下には穴が掘られていて、そこに瓶が埋められているそうです。その瓶は鐘の音響効果をもたらすとともに、冥界と通じている穴を塞ぐ役割を持っていると言われています。鐘楼の壁からは参拝者が自由に鳴らすことができるよう撞き紐が外に飛び出しています。紐を勢いよく引いて鐘を鳴らすことにより、一時的に冥界と交信し、現世を超越した体験ができることでしょう。
梵鐘しらべ
時間 | 基本的にいつでも |
打数 | ー |
前捨て鐘 | ー |
実質 | ー |
後捨て鐘 | ー |
源氏物語の作者・紫式部の源氏供養
小野篁のお墓の隣には紫式部が?
堀川北大路と堀川紫明の中間付近に、「小野篁卿墓」と「紫式部墓所」という石碑が並んでいます。もともと篁の墓所に紫式部の墓が移設されたとされています。これは源氏物語の登場人物や作者である紫式部を供養する「源氏供養」という当時の考えが背景にあります。
紫式部の地獄行きは阻止できたのか?
紫式部は源氏物語で好色な物語を描いたことから、地獄に落ちたと考えられており、その霊を救うために篁の墓所に移動されたと伝えられています。閻魔大王の補佐をしていたとされる小野篁はこれまで何人もあの世から救い出したエビソードがあり、その能力が源氏供養にふさわしいと考えられたのかもしれません。
梵鐘ものがたり
昼間は名家出身の高級官僚
六道珍皇寺に祀られる小野篁は、平安時代初期に活躍した実在の人物です。祖先は聖徳太子の使者として中国に渡った小野妹子(おののいもこ)です。朝廷の高官として活躍し、歌人として百人一首にも名を残しました。篁は、これまた謎の多い歴史上の人物『小町小町』の祖父と言われています。一方で、名門の高級官僚とは思えないようなミステリアスな伝説をたくさん残しました。
小野篁が作ったと伝わる閻魔像
境内に残る『冥土通いの井戸』
現世から冥界へ行く道は現在も残っています。境内の庭にある『冥土通いの井戸』を利用したと言われています。参拝者が井戸に近づくことはできませんが、本堂の廊下から撮影は許可されています。
中を覗いてみたくなる冥土通いの井戸
あの世から現世に帰るための手段は?
篁が冥界から現世へ戻ってきたルートはいくつかの説があります。古文献によると嵯峨野にあったとされています。しかし、嵯峨野は六道珍皇寺から距離があり、当時の移動手段である牛車では日々の往来が現実的ではないという指摘もあります。そもそも冥界との往来が現実的なのかという話もありますが。。。
篁の孫と言われている小野小町、ARC浮世絵・日本絵画ポータルデータベースより
新たに発見された『黄泉がえりの井戸』
5年前、境内に隣接する住宅で工事が行われた時に、偶然新たな井戸が発見されました。小野篁は嵯峨野ではなくこの井戸を使って現世に戻ってきていたのかもしれません。井戸は通常非公開ですが、特別なイベント等で見学できることがあります。ただし、撮影は許可されていません。
お寺の周辺にも不思議スポットがたくさん
特に盂蘭盆の時期になると、京都のお盆を代表する行事『六道まいり』には多くの人々が訪れて、『迎え鐘』を打鐘してご先祖を迎えます。また、最近は珍しくなった一般参拝者が自由に打鐘することができる梵鐘としても貴重な存在です。
アクセス
住所
京都府京都市東山区小松町595
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お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
- 梵鐘の愛好家
- 出張先や夜時間に梵活中
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!