大阪・釣鐘屋敷:歌舞伎のクライマックスに描かれた鐘の音(大阪府有形文化財)
大阪地下鉄谷町線の天満橋駅から徒歩5分の場所に江戸時代の釣鐘が残されています。この地域の住所「釣鐘町」という地名も、この釣鐘に由来しています。
釣鐘屋敷には、大阪の町に時を告げるための「大坂町中時報鐘(おおさかまちじゅうじほうしょう)」があります。この鐘は重さ3トン、高さ1.9メートルもある巨大なもので、第三代将軍徳川家光が大坂城を訪れた際、大坂町中の地子銀(固定資産税)の永久免除を約束したことへの感謝として作られました。この鐘は2時間おきに鳴り響いて、町中に時を知らせる役割を果たしていました。
鐘楼は明治3年に撤去されましたが、釣鐘は大阪府庁屋上に保存されました。そして昭和60年、地元有志の努力によって再び元の釣鐘屋敷地へ戻され、現在も日に3回(8時、12時、日の入り時)その音を響かせています。
この鐘は文学にも描かれています。江戸時代の物語である『曾根崎心中』は、人形浄瑠璃や歌舞伎で人気の演目です。主人公の徳兵衛とお初が心中を決意するクライマックスで、「七つの時が六つ鳴りて残る一つが今生の鐘の響きの聞き納め」とのセリフが流れます。二人が最期の地として選んだ曽根崎は釣鐘屋敷から約2キロほどであり、雪道の中を歩く二人がこの世の最期に聞いたのが釣鐘屋敷の鐘の音でした。
釣鐘町に隣接する天満橋は、旧淀川の水運基地であった八軒家船着場があり、水都大阪の中心として栄えました。現在では観光遊覧船の発着拠点となっており、特に春の季節には川の両岸のサクラを見にたくさんの人で賑わいます。水陸両用船も観光客に人気があり、大阪の魅力を楽しむことができます。
歴史と文化が交錯する釣鐘屋敷とその周辺は、大阪の魅力を感じることができる場所です。その鐘の音は、今もなお多くの人々に愛され続けています。
お寺の鐘しらべ管理人
- 東京在住のサラリーマン
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