
梵鐘単体の評価
奈良・長岳寺:古代の面影がのこる山辺の道と平和の鐘
古代の記憶が色濃く残るこの地に、最古の道といわれる「山辺の道(やまのべのみち)」が南北に走っています。山裾を縫うように延びるこの古道は、古墳群、古社寺、そして謎に満ちた古代天皇の陵墓をつなぎ、千数百年前の世界へといざないます。その道のほとりに佇むのが、古刹・長岳寺です。

古代から続く境界呪物、勧請縄の風習
長岳寺を訪れてまず目を引くのが、山門に張られた太い縄。「勧請縄(かんじょうなわ)」と呼ばれるこの縄は、毎年正月に地元の人々によって編まれ、結界として張られるものです。
この地域には古来より、外から災いが入り込むのを防ぐために境界に縄を張る風習がありました。長岳寺を含む山辺の道沿いや、近隣の山添村・笠置町などに今もその習慣があるそうです。

縄は半年ほどで自然に切れるのが常。切れること自体に不吉な意味はなく、むしろ自然な成りゆきとして受け止められています。切れた縄はそのまま年末まで放置され、年が改まると新しい縄が編まれます。
梵鐘しらべ

時間 | 時間内ならいつでも |
打数 | ー |
前捨て鐘 | ー |
実質 | ー |
後捨て鐘 | ー |
弥勒大石棺仏と古代王権の影

境内の奥には、「弥勒大石棺仏(みろくおおせっかんぶつ)」と呼ばれる石仏が安置されています。これはもともと古墳の石棺材を転用してつくられたもので、ほんのりとしたピンク色が印象的です。この石材は九州の特別な地域で採取される凝灰岩で、非常に貴重なもの。
一説には、長岳寺近くの崇神天皇陵から持ち出された石棺に仏を彫ったものではないかとも語られています。伝承の域を出るものではありませんが、こうした逸話が自然と残ること自体が、地域に根づく“古代”の名残を物語っているようです。
梵鐘ものがたり

鐘楼門が語る長岳寺の歩み
創建は平安時代初期、弘仁13年(822年)と伝わる長岳寺。戦乱や火災により多くの堂宇や仏像が焼失する中、現存する鐘楼門は平安時代に建立されたもので、鐘楼門としては日本最古のものとされます。
現在はこの鐘楼門に鐘はありませんが、代わりに参詣者を迎えてくれるのが、境内の池のほとりにある「平和の鐘」。昭和41年(1966年)に鋳造されたもので、誰でも自由に撞くことができます。

アクセス
住所
奈良県天理市柳本町508
ホームページ
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
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