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梵鐘単体の評価
京都・東福寺: 800年続く深夜の『送り鐘』(重文)
東大寺の『東』と興福寺の『福』から名付けられた東福寺。その歴史は約800年前に遡ります。
極めて珍しい深夜23時45分の鐘
京都駅の隣、『東福寺駅』から徒歩10分ほど。紅葉の名所として知られ、シーズンになると多くの人々で賑わいます。ここでは極めて珍しい打鍾の習慣がいまも続いています。昼間の喧騒を忘れ静まり返った深夜23時45分、鐘の響きが東福寺一帯を静かに彩ります。
梵鐘しらべ
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時間 | 毎晩23時45分 |
打数 | 24 打 |
前捨て鐘 | 3 打 |
実質 | 18 打 |
後捨て鐘 | 3 打 |
雪舟ゆかりの芬陀院
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東福寺には25の塔頭寺院があり、深夜の『送り鐘』は塔頭のお坊さんが3か月ごとに交代で担当しています。
塔頭のひとつ、芬陀院は雪舟ゆかりのあるお寺です。雪舟は日本の水墨画の巨匠ですが、当時の本職は僧侶、東福寺で修行した際に滞在したのが芬陀院でした。雪舟はこのお寺に枯山水の庭園を造り、今もなお多くの人が鑑賞に訪れます。
また、芬陀院には菊の御紋があしらわれた家財道具が数多く残されています。これは一条家の菩提寺が芬陀院であることと関係しています。明治天皇の妃である昭憲皇太后は一条家の出身で、天皇家が東京に移る際に京都御所の家財道具を芬陀院に遺されたというエピソードがあります。
梵鐘ものがたり
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東福寺に伝わる三つの梵鐘
東福寺には3つの梵鐘があります。最初の梵鐘は、駅から最も近い入口である日下門から境内に入り、左手に位置する殿鐘楼に収められています。この梵鐘は平安時代の初期に造られた国の重要文化財です。今は収蔵庫に保管されています。廃寺となった西寺から伝わった遺品という話もあるそうです。
『送り鐘』に使う開山堂の梵鐘
もう一つの梵鐘は国宝三門の裏手にある鐘楼にあり、大晦日の除夜の鐘などで一般の参拝者が打鍾するイベントに使用されます。そして、三つ目の梵鐘は開山堂・常楽庵の鐘楼に設置されており、特別なお坊さんしかそこに立ち入ることはできません。
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密かに伝わる深夜の伝統
『送り鐘』は毎晩深夜23時45分に鳴り響きます。この伝統は、東福寺を開山した聖一国師の活動にちなんでいます。聖一国師は建仁寺の職務も兼ねていて、夜になると建仁寺に移動するという日々を過ごしていました。東福寺は聖一国師の出発を建仁寺に知らせるために鐘を鳴らしました。この伝統は聖一国師が亡くなって以降も毎日続き、今日まで受け継がれています。
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建仁寺では『迎え鐘』の儀式
一方の建仁寺では『迎え鐘』の儀式がしっかりと残されています。毎年6月4日の深夜2時、開山堂の中の梵鐘が打鍾され、東福寺といにしえの交流が再現されます。
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『送り鐘』の時刻は深夜なので境内に入ることはできません。お寺の外側にある臥雲橋付近から開山堂の鐘の音を聞くことができます。夜の静けさに包まれた中で、800年の歴史を感じながら深夜の鐘のしらべに浸るひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
アクセス
住所
京都府京都市東山区本町15丁目778
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皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!