京都・萬福寺:宇治に伝わる中国禅寺の合山鐘(重文)

京都府宇治市にある黄檗宗大本山の寺院「萬福寺(まんぷくじ)」は、その創建者である中国僧「隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師」によって1661年に開かれました。その建築様式や儀式作法などには、中国明朝時代の影響が色濃く残っています。中国様式のお寺は多くが失われてしまい、創建当初の姿のままを今日に伝える萬福寺は極めて貴重な存在です。

中国明朝時代の影響が残る建築様式

珍しい中国明の様式を残すお寺

萬福寺の建物は、中国明朝様式を取り入れた伽藍配置となっており、創建当初の姿を今日に伝える珍しい寺院です。主要建物23棟、回廊、額などが国の重要文化財に指定されています。各建物は屋根付きの回廊で結ばれており、南側には鐘楼、伽藍堂、斎堂、東方丈があり、北側には鼓楼、祖師堂、禅堂、西方丈が対称に並んでいます。

龍の背の鱗をモチーフ化した中国式の参道

隠元さんが日本に伝えたインゲン豆

萬福寺を総本山とする黄檗宗の寺院では、儀式や法式、梵唄などに中国的な特徴が強く残っています。例えば我々に馴染み深い般若心経も中国式のイントネーションで唱えられます。隠元禅師は、隠元豆(いんげんまめ)や孟宗竹(たけのこ)、蓮根(れんこん)などを日本にもたらし、食文化にも影響を与えました。また、宗教儀礼に使用される木魚などの法器も、中国の影響を受けています。

中国様式の木魚はホンモノの木魚

梵鐘しらべ

時間拝観時間内ならいつでも
打数自由に撞ける
前捨て鐘
実質
後捨て鐘

秋の恒例「黄檗ランタンフェスティバル」

萬福寺では、毎年秋に「黄檗ランタンフェスティバル」が開催されます。この夜祭は2022年から始まり、10月初めから12月初めまでの2か月間行われます。通常の拝観時間は9時~17時ですが、フェスティバル期間中は夜間拝観が21時まで可能です。

フェスティバルでは、大小30種類の中国ランタンが萬福寺の境内を彩り、中国寺院の雰囲気を一層引き立てます。ランタンの柔らかな光が、寺院の歴史ある建物や庭園を幻想的に照らし出し、訪れる人々に特別な夜のひとときを提供します。

また、中華料理の夜店が並び、訪れる人々に本格的な料理を手軽に楽しんでもらえる他、伝統芸能ショーや音楽コンサートなどのイベントも豊富に開催されます。

萬福寺は、日本でも特に和風の風情を感じる京都に位置していますが、境内に一歩足を踏み入れると、まるで中国にいるかのような異国情緒を味わうことができます。

梵鐘ものがたり

下部に波打たせ模様がある中国鐘

中国と日本の折衷「合山鐘」

萬福寺の梵鐘は、開山堂から天王殿への回廊に吊るされています。回廊にある鐘という点では、法隆寺西院と様式が似ています。萬福寺の梵鐘は中国様式と日本様式の折衷で「合山鐘(がっさんしょう)」と呼ばれています。1697年に製造され300年以上の歴史を誇り、国の重要文化財に指定されています。

この鐘の特徴は、「波状うねり八葉型」という形状で、特に下部に波状のうねりがある点です。この形は、中国唐寺に見られる伝統的な中国美を反映しています。萬福寺を創建した隠元隆琦が選んだ銘が鐘に刻まれており、隠元は文人としても優れ、彼が遺した銘文は文学作品としても非常に貴重です。

羅睺羅尊者(らごらんそんじゃ)は心の中の仏を示す

三門を 出れば日本ぞ 茶摘み唄

江戸時代の歌人・菊舎は萬福寺で中国の雰囲気に浸ったあと、三門の外に広がる茶畑の風景を見て、そこが日本であることを俳句で表現しました。

萬福寺は、その中国風の建築や文化、歴史的背景から、日本の他の仏教寺院とは一線を画す独特の魅力を持っています。

アクセス

住所

京都府宇治市五ケ庄三番割34

ホームページ

https://www.obakusan.or.jp

お寺の鐘しらべ管理人

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