行こう鳴らそう除夜の鐘 Top5【東海編】
――街の中心で響く、庶民の鐘の音
商店街や住宅街のすぐそばで、除夜の鐘が響くのがこの地域の魅力です。
繁華街のにぎわいと、人々の祈りが交わる“街の鐘”。
初鐘として年明け0時から鐘撞きが始まるお寺が多いのも特徴です。
土地に根ざした年越しの音風景を探してみてください。
今回は、名古屋を中心にお寺の鐘しらべが特におすすめする5つのスポットを紹介します。
1.大須観音(名古屋市中区)
花の彫刻が咲く、名古屋の象徴「華精の鐘」
名古屋屈指の繁華街・大須商店街の中心にあり、初詣でも人気の大須観音。除夜の鐘の整理券は108枚限定で、例年12月下旬から販売(1枚1,000円)。深夜0時から打鍾が始まり、商店街まで行列が伸びます。

戦時中に旧鐘を失いましたが、地元婦人会が寄付を募り、昭和41年に杉本健吉デザインの新鐘「華精の鐘」を完成。梅・牡丹・蓮・菊の花が四面に刻まれ、名古屋を象徴する文化の音を響かせます。
2.万松寺(名古屋市中区)
白竜と信長のからくりショー、賑わいの中で撞く一打
大須商店街の中心に溶け込む万松寺は、織田信長ゆかりの寺。白竜ショーや信長からくり人形で知られる“ハイテク寺院”です。梵鐘は本堂屋上にあり、普段は非公開。

大晦日には除夜法会が行われ、年越しそばを食べながら新年を迎える人々で賑わいます。0時を過ぎると参拝者が願いを込めて打鍾します。伝統と現代が融合した、名古屋らしいにぎやかな年越しが味わえます。
3.久国寺(名古屋市東区)
岡本太郎が生み出した、唯一無二の“アート梵鐘”
久国寺の梵鐘は岡本太郎が制作した貴重な芸術作品。上半分には無数の角が突き出し、音の拡散を象徴。下半分には仏や動物、魚、妖怪が響きに喜ぶ姿が刻まれています。

大阪万博の太陽の塔が登場する5年前、1965年に作られたもので、文化財としてもアートとしても極めて価値の高い一品です。この鐘が鳴るのは大晦日のみ。次に音を聞ける機会を逃さないように。
4.東別院(名古屋市中区)
文化財の鐘と光の共演、荘厳な夜のイベント
真宗大谷派の東海本山・東別院の梵鐘は、1692年(元禄5年)鋳造の名鐘。高さ177.5センチ、口径108センチを誇り、名古屋市指定文化財に登録されています。

大晦日には年明け0時から1時間半、参拝者が順に鐘を撞くことができます。境内ではデジタル掛け軸のプロジェクションマッピングが行われ、荘厳な鐘の音と光の演出が、幻想的な年越しの夜を彩ります。
5.神禅院(岐阜県関市)
奈良時代の古鐘が響く、雪深き山の祈り
関市の山中に佇む神禅院には、奈良時代の作と伝わる古い梵鐘が伝わります。現存する中でも特に古い鐘の一つで、撞座には時代を物語る破損が見られます。国の重要文化財に指定され、大切に守り継がれてきました。

大晦日には特別に除夜の鐘として開放され、雪に包まれた境内に、千年以上の時を超える音が静かに響き渡ります。
【番外編】心に響く代替梵鐘(だいたいぼんしょう)めぐり
音のない鐘が伝える、平和への祈り
太平洋戦争中、「金属類回収令」によって多くの梵鐘が供出され、全国のお寺から鐘の音が消えました。名古屋市にはその記憶を留めるため、鐘楼に“石の鐘”を吊るしたお寺があります。石なので実際に音は鳴りませんが、静けさの中に確かな響きを感じさせます。それは「音のない音」として、平和を祈る心を今に伝えています。

名古屋の円明寺や浄明寺では、この石鐘が今も戦争の記憶を語り継いでいます。かつて失われた音を想い、耳ではなく心で聴く鐘の旅に出かけてみませんか。

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!



