行こう鳴らそう除夜の鐘 Top5【関西編】

年の瀬を告げる鐘の音に出会う
全国各地のお寺では、参拝者が打つ「除夜の鐘」体験が行われます。
お寺の鐘しらべ編集部では、地域ごとに特色ある“響きの名所”を厳選しました。
都心の夜を彩る焚火の鐘、商店街に響く庶民の鐘、
そして古都に眠る伝説の鐘――。
あなたの年越しにぴったりの音風景を、三つの地域編で紹介します。

1.知恩院(京都市東山区)

17人の僧侶が響かせる、日本一有名な除夜の鐘

NHK「ゆく年くる年」にもたびたび登場する、日本で最も有名な除夜の鐘。
総重量70トンを超える大鐘を17人の僧侶が力を合わせて撞く姿は圧巻です。僧侶の掛け声と鳴り響く深い低音は、まさに年の瀬を告げる“日本の音風景”。当日は大変混み合うため、参拝を予定する場合は必ず公式ウェブサイトで当日の時間を確認しておきましょう。

2.大雲院(京都市東山区)

祇園精舎の鐘が眠る、銅閣の寺

平家物語の有名な書き出し「祇園精舎の鐘」の実物がここに現存します。
この鐘は1490年(延徳2年)の銘をもち、かつて祇園社(現・八坂神社)にあったもの。
明治初期の神仏分離令により大雲院へと移されました。通常使用されず、大晦日に除夜の鐘を撞くことがあったりなかったり。もしその瞬間に立ち会えたら、まさに幸運です。
鳴らなかった場合は、すぐ隣の高台寺で京都の夜景と鐘の音を楽しめます。

3.方広寺(京都市東山区)

豊臣家滅亡のきっかけとなった、因縁の名鐘

「国家安康」の銘文で知られる、歴史上最も有名な梵鐘の一つ。
秀吉の死後、徳川家康の勧めで豊臣秀頼が寄進した鐘ですが、銘文が「家」と「康」を分断しているとして家康の怒りを買い、大坂の陣へと発展したと言われています。
国の重要文化財に指定され、今も堂々とその姿を残しています。
近年はライトアップのみですが、2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』の放送に合わせて中継される可能性もあり注目です。

4.鳴虎報恩寺(京都市上京区)

鳴く虎の伝説が生んだ、撞かずの鐘

豊臣秀吉がこの寺の虎の絵を気に入り、聚楽第へ持ち帰ったところ、絵の虎が「寺に帰りたい」と鳴き出したという伝説が寺名の由来です。
ここの梵鐘は平安京最古で、国の重要文化財に指定。「撞くと不吉が起こる」とも言われるため、実際に使われるのは一年に一度──大晦日の夜のみ。当日はツアーも組まれ、お寺の外まで行列ができるほどの人気です。京都・鳴虎報恩寺:鳴ると不吉『撞かずの鐘』都市伝説(重要文化財)

5.新薬師寺(奈良市高畑町)

古代の音色とともに過ごす、奈良の静かな年越し

奈良を代表する古刹・新薬師寺には、日本最古級の梵鐘があります。「鬼滅の刃」のモデルとウワサされる梵鐘で“鬼の爪痕”が確認できます。天平の時代から続く祈りの象徴。古都奈良の澄んだ夜気の中に響く音は、一千年を超えて人々の心を鎮めてきた静寂の響きです。

【番外編①】法隆寺東院(奈良県斑鳩町)

除夜の鐘は鳴らさず、正月の「七つ鐘」を伝える

法隆寺では除夜の鐘の風習はなく、正月の「舎利講の鐘」がそれに相当します。
1日7打、3日間で計21打を撞くという古式ゆかしい儀式で、平安時代から続く伝統行事。
和泉式部はこれにちなみ、「南無仏の舎利を出ける七つ鐘 昔もさそな今も双調」と詠んでいます。お正月だけに聞ける縁起の良い鐘の音を、初詣とともに味わってみてはいかがでしょうか。

【番外編②】西法寺(兵庫県芦屋市)

ドラム缶梵鐘 ― 震災から生まれた再生の音

阪神淡路大震災で被災し、避難所となった西法寺では、炊き出しや風呂に使われたドラム缶を活用した「ドラム缶梵鐘」が使われています。住職の願いから誕生したこの鐘は、
震災から30年の今年、二代目へと受け継がれています。
初代ドラム缶梵鐘は寺の屋上に保存され、今も震災の慰霊と平和を祈る象徴として静かに佇んでいます。

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!