奈良・松尾寺:ビイロク文字が迎える日本最古の厄除け寺

JR大和郡山駅からバスに乗り、松尾寺口バス停で降りたあと、さらに2キロ以上の登り坂を歩いた先に、松尾寺はあります。松尾山の中腹に立つそのお寺は、麓からはっきりと確認でき、「あそこまで登るのか」と思わされるだけに、道のりはなかなかの体力勝負です。

クセ強めの“お言葉”たち──ビイロクの存在感

境内に足を踏み入れるとまず目に飛び込んでくるのが、独特な文体の案内板や“お言葉”の数々。これは「ビイロク」が書いたもので、松尾寺の名物にもなっています。「ビイロク」という名は、未来仏・弥勒(みろく)に由来しており、宗教的な敬意とユーモアが同居する、不思議な魅力のある山寺です。

売店ではこのビイロクによる書が購入でき、訪問記念に手に取る人も多いようです。もちろん買わなくても構いませんが、私はせっかくだからと1枚購入しました。

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古道を歩く──法隆寺へと続く七曲道

松尾寺の南惣門には「七曲道(ななまがりみち)」と呼ばれる古道が残されています。せっかくなので、帰り道はこの古道を下って斑鳩へ下山することにしました。木陰が続く山道は、真夏でも涼しさを感じる快適なルートです。通行人はおらず、少し心細い山道ではありましたが、下山して開けた視界の先に法隆寺の五重塔が見えました。奈良時代から存在する二つのお寺とそれを結ぶ山道。

古代の人々も、この風景を見ていたのだろうと思うと、時を超えたつながりを感じずにはいられません。

梵鐘ものがたり

厄除けの鐘を撞く

松尾山から大和郡山の市街地を見下ろす高台に、梵鐘が設けられています。この鐘は、ビイロクにより「厄除の鐘」と名付けられたもの。長い登り坂を越えてたどり着いた先で、ひと撞きする鐘の音には、ビイロクの文字に宿る不思議な力と相まって、どこか霊験めいた響きが感じられます。鐘の余韻が山の静寂に吸い込まれる瞬間、厄を祓うとはこういうことかと、そんな思いが胸に浮かびました。

アクセス

住所

奈良県大和郡山市山田町683

お寺の鐘しらべ管理人

  • 東京在住のサラリーマン
  • 梵鐘の愛好家
  • 出張先や夜時間に梵活中

皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。

しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。

「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。

一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!

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