
梵鐘単体の評価
鎌倉・建長寺:鎌倉大仏の名工が遺した“現役”の洪鐘(国宝)
建長寺は、北鎌倉駅から歩いて15分ほどの場所にあります。このエリアには、建長寺のほかにも円覚寺、浄智寺、東慶寺といった臨済宗の寺院が点在していて、禅の雰囲気が色濃く漂う地域です。この一帯は、もともと源頼朝が北条氏に与えた土地で、北鎌倉にある多くの寺院は北条氏と深いゆかりを持っています。
安永四年(1775年)に再建された三門は、国の重要文化財に指定されています。伝説によると、かつてここに寝泊まりしていた古狸がお坊さんに化けて諸国を巡り、再建のための募金を集めたという話から「狸の三門」とも呼ばれています。いまでは「けんちん汁」と呼ばれる精進料理「建長汁」を作ったのもこの狸だという話があるそうです。

鎌倉と京都の五山制度
建長寺は、鎌倉時代中期、北条時頼によって創建された禅宗寺院です。初代住職には、中国から渡来した高僧・蘭溪道隆(らんけい どうりゅう)が迎えられ、本格的な禅の教えが日本に根づいていく重要な拠点となりました。鎌倉時代に導入された「五山制度」で建長寺はその第一位とされ、鎌倉を代表する名刹として現代に至るまでその存在感を保ち続けています。
ちなみに、五山制度は室町時代に京都でも整備され、足利義満が南禅寺を「五山之上」として別格に位置づけたうえで、京都の天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺、そして鎌倉の建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺がそれぞれ「五山」に指定されました。

毎週金曜・土曜の午後に座禅会が開催されます
梵鐘しらべ

時間 | 毎日夕方、23日14時 |
打数 | 11回 |
前捨て鐘 | ー |
実質 | ー |
後捨て鐘 | ー |
梵鐘ものがたり

直線的な鎌倉スタイル
貴重な現役の国宝梵鐘
建長七年(1255年)に鋳造された梵鐘は、国宝に指定されています。製作者は、同じく国宝の円覚寺の洪鐘や、鎌倉大仏を手がけた物部重光です。鎌倉時代の作品ですが、撞座の位置を高くするなど、平安時代のデザインを取り入れている点が特徴です。建長寺と円覚寺の梵鐘は特別に「洪鐘(おおがね)」とも呼ばれています。執権・北条時頼の寄進により、中国から渡来した高僧・蘭溪道隆が銘文を選び、物部重光が鋳造したことから、「鎌倉三絶の鐘」と称される名鐘です。

国宝に指定されている梵鐘は全国で14ありますが、そのなかで毎日使用されているのは、この建長寺と奈良・東大寺の二か所のみです。
夏目漱石は「鐘つけば 銀杏ちるなり 建長寺」という俳句を残しました。鐘の音とともに銀杏の葉が舞い散る情景を詠み、季節の移ろいと建長寺の静寂を美しく表現しています。この時期、夏目漱石は坊ちゃんの舞台となった愛媛県松山市で英語教師をしていましたが、大学の同級生であった正岡子規はちょうど漱石の下宿に居候していました。そんな時に発表された漱石の句は、正岡子規による有名な俳句「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」の元になった作品ともいわれています。

建長寺は本尊がお地蔵さんという珍しいお寺です
アクセス
住所
神奈川県鎌倉市山ノ内8
ホームページ
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!