
梵鐘単体の評価
京都・大原 勝林院:善の綱と別れの鐘(重要文化財)
京都駅からバスで約1時間。終点・大原バス停から徒歩10分ほど歩くと、呂川と律川に沿った道にしば漬けの店が並び、昔ながらの風情が漂います。その先にあるのが、三千院の隣に佇む勝林院です。ここ大原は比叡山延暦寺の修行道場から発展した地で、江戸時代末までは来迎院と合わせて「大原寺(だいげんじ)」と総称される一大寺院を形成していました。勝林院もその一つで、長和2年(1013年)の創建と伝わります。

善の綱 ― 阿弥陀如来と結ばれる白い糸
本堂に安置される本尊・阿弥陀如来(天文2年〈1533〉造像)は、ひときわ珍しい特徴を持っています。仏の手から白い綱が伸び、参拝者が触れられるよう結ばれているのです。これは「善の綱」と呼ばれ、阿弥陀如来と衆生とを直接結ぶ象徴とされます。来世への不安を和らげ、極楽往生を願う信仰の具体的な形として、今も大切に受け継がれています。

梵鐘しらべ

時間 | お葬式、大晦日 |
打数 | ー |
前捨て鐘 | ー |
実質 | ー |
後捨て鐘 | ー |
梵鐘ものがたり

大原に伝わる古代鐘
境内に吊される梵鐘は、平安時代初期の制作とみられる古代鐘で、国の重要文化財に指定されています。装飾は素朴ながら力強く、悠久の時を経てなお澄んだ響きを伝えています。多くの寺で日常的に撞かれる鐘ですが、勝林院では特別な時にだけその音が鳴り響きます。

葬送を告げる一打
勝林院の梵鐘は、地域の葬儀の際にしか撞かれません。勝林院町・来迎院町・長瀬町に住む人々が亡くなると、棺は「来迎橋」に安置されます。そこから本尊の善の綱が棺まで延ばされ、参列者も白布を垂らして死者と結ばれます。僧侶が読経するなか、遺族の男性が梵鐘を一度だけ撞くそうです。鐘の響きは阿弥陀如来に届き、故人を極楽浄土へと導くと信じられてきました。この風習は鎌倉時代から続くとされ、今なお息づく非常に貴重な習俗です。

アクセス
住所
京都府京都市左京区大原勝林院町187
ホームページ
皆さんお寺で鐘を鳴らした経験があると思います。お寺の鐘、梵鐘(ぼんしょう)はとても身近な文化です。それぞれの寺や地域の歴史を反映し、豊富なバリエーションが存在します。
しかし最近では騒音問題や人手不足により、その文化は急速に失われつつあります。日々の生活や街の風景が変わる中で、鐘の音は変わらない唯一の文化遺産です。
「お寺の鐘しらべ」では、梵鐘にまつわる文化や歴史を通して、鐘の魅力を発信しています。朝活やお仕事後のひとときに楽しめるプチ旅行の参考としてもご活用いただけます。
一緒に梵鐘を巡る旅に出かけましょう!